第42章 開戦
「・・・スイレン、鬼鮫、ハルのことは頼んだぞ。オレはもう、何もできないから」
「わかりました。・・・あなたも、頑張ってくださいね」
「ああ」
鬼鮫はかつての相方に最後の別れを告げた。
「ねえ、イタチさん。私は案外、人間だったようです」
「・・・お前はずっと人間だろ?ま、いいことじゃないか。お前の本質は捨てたもんじゃないってことだな」
「まあ・・・あなたには負けますけどね」
イタチはフッと笑って鬼鮫を見た。
最後にナルトを見ると、イタチはその場を去った。
穢土転生を止めるべくカブトの元へ急ぐイタチの後ろには、サスケがいた。
先ほど偶然すれ違ってしまったのだが、止まる時間はなかった。
予想通り、サスケはイタチを追ってきた。
そしてこうして、兄弟揃ってカブトの前にいることとなった。
カブトはニィと口角を吊り上げたあと、三日月形に歪んだ目で兄妹をじっと見た。
「何の因果かな・・・キミたちきょうだいは本当に興味深いよ!三人揃いも揃ってこんなに研究しがいがあるんだからね!」
「“三人”・・・だと?」
「ああ、そうだ。・・・本当はどこかに使ってやろうかと思ってたんだけど、まあいいか」
「・・・」
「おいで。キミの出番だ」
そんなカブトの声で岩陰から姿を現したのは、先ほど見た妹の姿だった。
無表情のイタチに対し、始めて見るサスケは呆然として表情で彼女を見た。
「!? おいカブト、お前、妹に何を・・・!」
「言っておくけど彼女をこうしたのはボクじゃなくて、マダラだ。でも・・・今から彼女を操るのはこのボクだってことを覚えておいてほしい」
「おい!!」
「さあ、キミの力を見せるときだよ」
ポン、とカブトがハルの方に手を置く。
「行っておいで」
そして、カブトが前へ背中を押した瞬間、ハルは距離を一気に詰め、持っていた刀で兄弟に斬りかかった。
「!」
サスケが抜刀するのを躊躇した一瞬、イタチがサスケを庇うようにして前に出た。
「兄さん!」
胸元を刃先がかすめたが、術のおかげですぐに戻る。
体術で対抗すると、ハルは一旦後ろに下がった。
「サスケ、躊躇は命取りだ!たとえ相手がハルであろうが、お前が死んでしまっては意味がないだろう!」
「ッ・・・アンタは、なんで平気なんだ」