第42章 開戦
「ハルさんは私が相手をします。・・・スイレン、お前では無理でしょう」
「・・・ごめん」
鬼鮫がスイレンの前に出る。
スイレンの手は未だ小さく震えたままで、悔しげな表情のまま唇を噛んでいた。
「おい、ハルはどうなってるんだ!?」
「お前たちが死んだことで生まれた悲しみにつけこまれたんだ、ハルは。・・・今のハルは自我がない。だからお前の声も、僕の声も、届かないんだよ!」
鬼鮫がハルを傷つけないように注意を払いながら対抗する。
けれども鮫肌は鬼鮫の意志とは関係なく、その鋭い歯でハルの腕に噛み付いた。
「!」
「ハル―――」
ポン!という音がして、ハルが消える。
どうやら分身だったようで、戦いの最中だったにもかかわらずイタチは小さくため息をついた。
が、その直後、イタチの右目から血が流れ落ちる。
「天照だ!」
ナルトの口からカラスが出てきて、イタチの万華鏡写輪眼と共鳴し、イタチはカブトの支配下から脱出することができた。
「安心しろ、オレはもう操られてはいない」
イタチが仲間に加わったことで、一同は長門を封印することに成功し、イタチはカブトのところへ行って穢土転生を止めることを言った。
「スイレン・・・オレが死んでから、ハルはどうなった?マダラに操られているのか?」
「うん」
「さっきナルトは“クロ”と言ったな。クロ・・・とは、木ノ葉のクロか?」
「ええ。・・・私たちが九尾を捕まえようとして、一杯食わされたあの少女らしいです。つまり、私たちが殺そうとしていたのはハルさん・・・ということになりますね」
「・・・そうか。じゃああの呪印は?」
「サスケを庇おうとしたけど、失敗して自分にもつけられてしまったってこと。・・・だからお前には口が裂けても言えなかったんだよ」
イタチが目を伏せ、小さく「そうか」と言うと、スイレンを見た。
「お前は・・・知っていたんだな」
「僕はずっと傍にいたから。だから僕は、ハルがずっと兄たちのことを考えていたことも、ハルの覚悟も全部知ってる」
「“覚悟”・・・?」
「ハルは“もし木ノ葉とサスケに刃を向けたら自分を殺せ”って僕に約束させた。・・・今言わないとお前は一生知らないことになると思ったから言っておく。ハルは周りが思うより、ずっと全部知ってるんだよ」