第41章 スイレンの覚悟
「うん・・・うん。ウチは、主様の一番弟子やもん。せやから、大丈夫や。アンタはウチらのこと、何も心配せんでええよ」
「そうだね。ありがと、ネネ」
そう言ったスイレンは小さく笑うと、ネネの頭を数回撫でた。
「・・・カカシ、用事は済んだ」
「・・・いいのか?」
「うん」
スイレンの言葉に躊躇いと後悔はなかった。
「じゃあね。ネネ」
「うん、頑張ってな、主様」
充血した目のまま、ネネは笑う。
スイレンも微笑み返して、その場を去った。
しばらくしてその場には、ネネの嗚咽だけが静かに響いた。
木ノ葉に戻ると、スイレンはカカシを見て問うた。
「腹は決まった?・・・カカシ」
「・・・もうすぐ、決まりそうだ」
「何それ。・・・それなら僕が連れてきた意味ないじゃん」
「いや、お前には感謝してるよ。お前の覚悟の重さを見て、オレがどれだけ弱い人間なのかがわかった」
「・・・いいんじゃない?泣いたことのない人間がいないように、みんな最初は弱いんだよ。でも、自分の弱さに気づいて向き合うことで、強くなれるんだと僕は思う」
「・・・」
「誰かを思って流す涙ってさ、すごく苦しくて、見ていて痛々しいものだけど・・・僕は、ハルが誰かを思って泣いてるのを何度も見てきたから、見苦しいものだとは思わない。・・・お前は、どう思う?」
クロがハルだとわかっても、カカシは意外にも落ち着いていたし、むしろ納得すらした。
ああ、あの子だったのか―――そう思った。
すべてを見透かすような瞳を持った少女。
初めて目が合ったとき、落ち着かなかったのは事実だ。
大切な人のためなら自分を犠牲にしても構わない―――そんな気持ちを持った彼女をずっと見てきたからこそ、今のスイレンを突き動かしているのだろう。
「オレも、お前と同じ考えだ。・・・なんかお前、ハルに似てるよ」
「・・・えっ・・・あ、ありがとう。ハルから貰った言葉を除いて、一番うれしい言葉かも」
「え、そんなに?」
「うん」