第40章 クロとハル
「でも・・・ナルト、ありがとう」
「・・・え?」
「ハルがそうだったように、お前もハルのことを信じてくれている。・・・誤解しないでほしい、ハルが暁に入ったのはあの男に脅されたからだ」
「あの男・・・?」
「面の男だよ。お前たちも見ただろ?・・・サスケを殺すって脅されたんだよ。それ言われたら、ハルはもう何も言えなかった」
「・・・じゃあ、アイツは・・・オレのこと、本当に友達だって思ってくれてたのか?」
「当たり前だ」
スイレンの言葉を聞いた瞬間、ナルトの中で立ち込めていた暗雲が晴れていくような気がした。
(違う・・・やっぱり、嘘なんかじゃない)
(オレとアイツが過ごした時間も、アイツの笑顔も、姿も、全部嘘じゃない)
(たとえアイツが“ごめん、全部嘘だよ”って言って笑っても、オレにとっては全部本当だって、言ってやる)
(だって、嘘も本当も、全部お前なんだろ)
「・・・それ、聞けて良かったってばよ」
「・・・スイレン、オレから質問していいか?」
「うん」
「ハルは、あの面の男が危険だと知らなかったのか?他のメンバーがたとえいい奴だったとしても、あの男だけは別だろ。それとも、やっぱり気づかないものなのか?」
カカシの質問に、スイレンは目を伏せ黙った。
と、その時ドアが開いて、全員が振り返る。
「アスマ」
「すまん、遅れた。もう始まってたみたいだな」
紅を病院へ送っていたというアスマに先ほどまでの話をすべて伝えると、アスマは驚いていた様子だったが、ただ一言「そうか」とこぼすと何も言わなかった。
「大丈夫か、アスマ」
「・・・ああ」
「じゃあ、続けるぞ。あの面の男の素性についてだったな・・・スイレン、頼む」
スイレンはアスマをチラリと見たが小さくため息をつくと、話を再開させた。
「ハルはずっと気づいていたみたいだよ。昔からあの男のことだけは警戒していた。僕も“あの男には近づかない方がいい”って言われたくらいだし・・・」
「知っていたのか?」
「みたい」
「素性は?そこら辺は何もわからないのか?」
「名前・・・なら、言っていた気がする」
視線を下へ泳がせるスイレンに、全員の視線が集まる。
そして、スイレンがその名前を口にした瞬間。
時計の針の音が、やけに大きく部屋に響いた。