第39章 あなたのこと
―――目を閉じたハルに、スイレンは心臓が止まりそうになった。
だが、そのあとすぐに熱っぽい吐息を確認し、ホッと胸を撫で下ろす。
(たぶん、これって風邪・・・だよね。前に見たことのある症状だ。ネネがしばらく安静にすれば治るって言ってたはず。でも・・・)
『・・・ナルトのところに行こう?ね?』
「・・・」
『ごめん。お叱りならあとでちゃんと受けるから。今はキミが優先だ』
それからのスイレンの行動は早かった。
すうっと息を深く吸い込むと、においを探す。
微かなそれを見つけ出すと、スイレンは目を開け、一目散に走りだした。
『ナルト!』
「誰だ!?・・・って、お前・・・」
『カカシ、お前でもいい!お願い・・・助けて』
「・・・お前、どうしたんだ?」
数十分後、スイレンはナルトたちを見つけ出し、懇願していた。
いきなりのスイレンの登場にカカシは少し驚いた様子だったが、スイレンが抱いているぐったりとしたクロを見ると、頷いた。
「・・・ひどい熱だな。少し先に宿をとってあるから、そこに連れて行くぞ。・・・おい、ナルト。ボサッとしてないでついてこい」
「あ、ああ・・・」
カカシがスイレンを連れて、先に行く。
呆然と立ち尽くしているナルトに、ヤマトが声を掛けた。
「どうしたんだい?」
「・・・た・・・」
「?」
「生き、てた・・・クロ・・・」
そこでヤマトは、ペイン襲撃の際、クロがヒナタをかばって刺された後、行方不明になっていたことを思い出した。
ナルトは服の袖で目元をこすると、充血した目のままカカシたちのあとを追った。
―――宿先の部屋で布団を敷き、その上で眠っているクロの姿があった。
「軽い脱水症状と、疲労・・・ってとこかな。しばらくは安静だね」
ヤマトがクロの状態を見てそう告げると、スイレンは深いため息をついた。
「しかし、何だってこんな急に・・・具合が悪いなら、出歩かない方がいい。少し回復したら家に帰りなよ」
ヤマトの言葉にもスイレンは反応せず、ずっとクロを見ていた。
そこで、ナルトがスイレンに話しかけた。
「・・・クロ、今まで何してたんだ?無事だったなら、ちょっとでも顔見せに来てくれよ」
『・・・そんなことしてる暇はなかったんだよ』