第39章 あなたのこと
「―――・・・もう、下ろして」
『・・・ダメだよ。またキミが向こうに行ってしまうかもしれないから・・・小南とは約束してるんだよ。キミを何があっても守り抜くって』
「・・・いらないよ、そんなの・・・そんな約束・・・しなくていい、そんな約束するくらいなら・・・」
『・・・』
「・・・もう、いや・・・」
私の震えた声に、スイレンは何も答えなかった。
いくら拭っても涙は底なしにあふれてくる。
辺りには私のすすり泣きだけが響いていた。
そうして、小南と離ればなれになってから二日が経った。
昨日から何をする気にもなれなくて、ボーッとしているだけだった。
(・・・そろそろいかなきゃ・・・こんなところにいて、オビトに見つかってしまっては元も子もない)
「スイレン・・・ごめん。もう大丈夫だから」
『・・・わかった。どうするの?』
「オビトに見つからないところに行く。サスケ兄さんにはゼツがついてるし、鬼鮫さんにはまだ組織に入ってる。・・・だから私たちだけで逃げるしかない」
『ナルトは?・・・アイツには頼れないの?』
「ダメ。・・ナルトは、これから大変になるんだから。私まで頼ってちゃダメ」
『そんなこと・・・』
何か言いたげだったスイレンは、私が立ち上がろうとすると心配そうに私を見た。
すると、思ったより力が入らなくて足元がふらつく。
『ハル!』
(・・・?)
何だか頭が痛い。 寒気もする。
崩れそうな足をなんとか踏ん張り、耐える。
「こんなときに・・・風邪でも引いたのか・・・?」
自覚すると、辛くなってくる。
『ハル、大丈夫?・・・体調が悪いの?』
「平気・・・」
意志とは裏腹に、ズルズルと座り込む。
スイレンが近づいて、私に呼びかける。
しんどい。頭も痛いし、本当は布団に入って眠りたい。
でも無理だ。
(・・・なんとしても逃げなきゃ。もしかしたら小南ちゃんがオビトを殺してくれているのかもしれない。きっとそう・・・小南ちゃんは強いんだ、だから・・・)
『ハル、ちょっとごめんね・・・!』
スイレンに横抱きに持ち上げられるが、私は抵抗する気も起らず、揺れる視界の中で目を閉じた。