第39章 あなたのこと
すると、前方に時空間内から出てきたオビトが現れ、首をボキ、と鳴らした。
「お前は厄介だな・・・しかし、術の効き目があまりないようで残念だ。まあいい、どうせお前も手に入れる」
『・・・ハル!!』
そこで置いてきたはずのスイレンの声が聞こえ、私が振り返った瞬間―――腹に衝撃を受け、私は一瞬息ができなかった。
「っぐ・・・」
「ごめんなさい、ハル。あなたをここで失うわけにはいかないわ」
「・・・こ、なんちゃ・・・なん、で」
私のみぞおちを殴ったのは、小南だった。
まさかの攻撃に私はショックでしかなく、直にパンチを受けていた。
「ありがとう、あなたがいてくれたから、私はまだ生きたいと思える。だから・・・逃げて」
「っいや・・・!」
「スイレン!早く連れて逃げなさい!」
痛みにうずくまる私を、スイレンが抱えてその場から離れる。
「待っ・・・スイレン、下ろしなさい・・・!下ろして・・・小南ちゃん!!」
『・・・ッごめん!』
「嫌だ、いやだ・・・!!クソッ、スイレン!離せ!!」
遠ざかっていく小南に手をのばす。
小南は泣きそうな表情になりながらも、笑っていた。
「ごめんね・・・あなたを一人にして。でも生きて・・・あなたは私たちの救い、そして希望・・・」
「あなたは私たちの大好きな人」
「覚えていてね、あなたが私たちに愛されていたこと。あなたが・・・私たちと過ごしたこと」
目を見開く私に、小南は優しく微笑んだ。
その口が動く。
読み取った言葉に、私は悲鳴混じりの声で彼女の名前を叫んだ。
「ッ小南ちゃん!!」
“当たり前じゃない。あなたはもっと自分を大切にすべきよ。これから大きくなって、いろんなことを経験していくのだから”
“・・・あなただけは必ず守る。それが、今の私にできる一番大切なことだから”
もう姿が見えない。
「どうして・・・どうしてなの、小南ちゃん・・・」
このまま、私は何もできずに終わるの?
「あ・・・ああ・・・」
ボロボロと涙がこぼれた。
“愛してる”
(そんなこと今言わないで・・・)
(待って・・・待ってよ・・・)
耐え切れず嗚咽をもらす私に、スイレンは辛そうに顔を歪めていた。