第38章 わたしは
スイレンが出てくるのを待っていた小南は、一人で居間にいた。
(・・・勝手に決めて、ハルは納得しないかもしれない。兄を人質にとられているんだから当たり前よね。でも・・・)
すると、一つの足音がした。
「おや、小南さん。戻っていたんですか・・・ゼツからは、あなたは戻らないと聞いていたんですがね」
「鬼鮫・・・」
「・・・どうするつもりなんです?きっとあの人はあなたを狙ってきますよ」
「そうね、わかってるわ。・・・私は組織を抜けるけど、ハルも連れて行く。あの子は私が守る。あの男のコマなどにはさせない」
「・・・そうですか。あなたにそこまでの覚悟があるなら、私は何も言いません。ただ・・・」
「?」
「ハルさんを、どうかお願いします。・・・フッ、こんなこと言うなんて柄じゃありませんけどね。私もあなたも・・・彼女のことになると、どうも過保護になるようですね」
「それを言うなら、みんなでしょ。何も今に始まったことじゃないわ」
そして、ハルが木ノ葉にいたことを話すと、鬼鮫は少し驚いたように目を見開いた。
「ハルさんが、“クロ”と呼ばれていた・・・?」
「ええ。それに“小さい頃からの仲だ”って、うずまきナルトが言っていたわ。・・・たしか、サスケが連れていた子の中に同じ名前の子がいたわよね」
鬼鮫が考え込んでいると、奥の方からハルを抱いたまま、歩いてくるスイレンの姿があった。
それに気が付くと、鬼鮫は顔を上げ、ハルに近づいた。
「・・・どうか、ご無事で」
丁寧な手つきでハルの頭をそっと撫でると、鬼鮫は小南に「お願いしますね」と言った。
こうして事実上、ハルは小南と共に暁を抜けることとなった。