第38章 わたしは
クロが倒れたその直後、ナルトの尾獣化が始まった。
ナルトとペインが木ノ葉からどんどん離れていき、その場には変化の解けたクロとヒナタが残されていた。
まだ辛うじて意識のあったヒナタは何とか気力で上半身を起こした。
「ッう・・・」
ヒナタの横に倒れているのは、髪の長い少女だった。
「クロ、ちゃん・・・?」
姿は違えど、彼女がクロで間違いなかった。
「クロちゃん・・・返事して・・・手当て、しなきゃ・・・」
すると、そこで白い髪の女性が出てきて、クロに駆け寄った。
『ハル!ねえ・・・なんでこんな無茶・・・!』
「・・・」
『ああ、どうしよう・・・キミがいなきゃ、僕は・・・』
今にも泣き出しそうな声で彼女が丁寧な手つきでクロを抱き上げる。
そこで女性がヒナタを振り返った。
『クソッ・・・』
「・・・え?」
次の瞬間、ガシッと女性の脇に抱えられ、ヒナタの体は宙に浮いていた。
先ほどの戦いでできた傷が痛み顔を歪めるが、女性は気にも留めていないようだった。
そして、あっという間に元いた場所に戻されると、彼女はすぐにどこかへ行ってしまった。
ヒナタを送ったスイレンは、自分がどうしたらいいのかわかっていなかった。
(・・・どうして起きないの?)
傷は塞がっているはず。
それなのに目を覚まさないなんて、おかしい。
『どうしたら・・・』
ぐっと唇を噛みしめるが、焦りが募るばかりだ。
さっきハルがかばった彼女を仲間のところに戻したのは、きっとハルが起きていたなら「そうしろ」と言うだろうと思ったからだ。
結局、スイレンは彼女をアジトへと連れて帰った。
ペインが死んでも、小南がアジトへ戻ってきても。
彼女がその日、目を覚ますことはなかった。
「―――・・・小南」
「何?」
「・・・ハルが、いた」
「え?」
「ハルが木ノ葉にいた。さっき、木ノ葉のくの一をかばってオレに刺された。・・・今日のことを言っていなかったのか?」
「そんなはず・・・まさか、ハル・・・私との約束を破って」
「まあいい。今日のことが終われば、本人に聞けばいい」
長門はそう言うと、九尾に近づきつつあるナルトの姿を見た。
「・・・平和は目の前だ」