第38章 わたしは
「クロ、ちゃ・・・」
「・・・独りよがりって、私嫌いじゃないよ。すごいよ、ヒナタちゃん。すごくカッコいい」
何も言わず私を見ているペインに、私は複雑な心境のまま彼を見返した。
「次から次へと・・・」
ボソリと呟いた彼が杭を取り出すのを見ると、ヒナタをその場に残し、覚悟を決めれないまま彼との戦闘を開始した。
(やっぱ、速い・・・!)
攻撃には反応できているが、私からは何も仕掛けられていなかった。
「神羅天征」
すると次の瞬間、吹き飛ばされ、私は地面に体を打ち付けていた。
「いっ・・・」
だが、痛みに顔を歪ませている場合ではなかった。
なぜなら私が見たのは、すでに負傷して動けないヒナタにとどめを刺そうとしているのか、彼女に近づいているペインの姿だったからだ。
「・・・!!」
彼が杭を取り出した瞬間、私はヒナタの前に立っていた。
「クロ!!」
グサリ、と私の体に何かが刺さる。
遠くの方で誰かが叫ぶような声で私の名前を呼んだ。
そのあと、後ろの方でヒナタのか細い声がした。
「クロ、ちゃん・・・」
ポタ、ポタ、と腹を貫通している杭を伝って、私の血が地面に飛び散った。
杭からペインのチャクラが入ってくるせいか、チャクラがうまくコントロールできない。
(このままじゃ、変化を保っていられない・・・)
「ぺ・・・ペイン、さ・・・」
私が彼の名前を呼んだ直後、ポフン、という音がし、ペインの目が僅かに見開かれた。
「ごめ、んなさい・・・」
「お前・・・」
(あーあ・・・バレ、ちゃった・・・)
そこで杭が抜かれ、そのまま私は後ろに倒れた。
揺れる視界の中で、私は瞬きを一つした。
スイレンが遠くから走ってくるのが見えて、「大丈夫だよ」と掠れた声で呟いて、それから私は意識を失った。