第38章 わたしは
チラリとヒナタの横顔を盗み見る。
「ヒナタ様。お気持ちはわかりますが、今我々が行っても彼の足手まといになるだけです」
「ですが・・・」
唇をキュッと噛む彼女の心情はきっと、悔しさでいっぱいなのだろう。
大切な人を守りたい。
でも力不足で、それができない。
そんな思いを、私はよく知っている。
「・・・ヒナタちゃん」
「・・・うん?」
「私ね・・・時には無茶も必要だと思ってるよ。大切な人を守りたいって気持ちは、何よりも大事なものだから。ヒナタちゃん、頑張って。・・・何かあったら助けてあげるから」
ヒナタは驚いたように目を丸くし、それから「ありがとう」と言って、前を向いた。
(・・・無理だとわかっているのに送り出すなんて、私って本当ダメだな。でも、ヒナタは本気なんだ。・・・だったら、後悔しないように・・・)
そして、ついにペインがナルトの両手を重ねた上に杭を刺して、身動きが取れないようになっていた。
急所も刺されており、自分の意志で体を動かすことはできない。
「・・・お前はオレの平和を嘘っぱちと言うがこの呪われた世界で人と人が分かり合う平和ほど虚構なものはない」
「エロ仙人は人が本当の意味で理解しあえる時代が来ると信じてた!お前のは違うってばよ!」
「・・・そろそろお前を連れて行く」
ペインがナルトへと手をのばしたとき、ヒナタが動いた。
「ナルトくんにはもう手を出させない!」
近くにいた日向家の人が「ヒナタ様!」と叫んでいたが、ヒナタの目線は彼だけに向けられていた。
「クロちゃん、私・・・頑張るね」
「増援か・・・」
「何で出てきたんだってばよ!?早く逃げろ!お前じゃそいつには―――」
「うん・・・これは私の独りよがり・・・ここに立ってるのは私の意志。―――ナルトくんを守るためなら死ぬことなんて怖くない!」
「・・・!?」
「―――私はナルトくんが、大好きだから・・・」
しかし、彼女がペインに敵うはずもなく―――彼女はついに倒れた。
そして、ペインが杭を振り下ろしたその瞬間。
「・・・!」
私はヒナタを抱きかかえ、ペインから距離をとっていた。