第38章 わたしは
「これでわかりましたよね?・・・私が平気でそういうことする人間だって。紅さんだって、自分とその家族を殺そうとした人間を泊まらせるなんてバカなことはしませんよね」
「・・・あなたは私を殺そうなんてしていないわ。それにわかっていたから」
「・・・」
「あなたが殺さないでいてくれること」
「・・・母子殺人なんて心が痛みますからね。・・・でもよくわかりました。紅さんて、結構肝座ってるんすね」
「ありがとう。よく言われるわ。ま、そういうわけでしばらくの間泊まっていきなさい」
「・・・なんで私にそこまでしてくれるんですか?」
そう言うと、紅は少しだけ笑って、
「だってあなた、何だか放っておけないから」
と言った。
「そろそろアスマが帰ってくるはずよ。あなたが出迎えてちょうだいね?・・・フフ、きっと驚くわ」
「え、でも・・・」
「いいのよ。女に二言はないわ。・・・ねえ、クロ。たまには大人に甘えなさい」
私が「・・・はい」と言うと、紅は「よろしい」と言って笑った。
ちょうどそのとき玄関のドアが開く音がして、私が遠慮がちにスイレンを連れて彼を出迎えると、彼は案の定ポカンとした表情のまま固まっていた。
「・・・お前、何でここに」
「いろいろ事情がありまして今日から数日間、お世話になることになりました。どうぞよろしくお願いします、あはは」
「あら、おかえりなさい、アスマ。そういうことだから、あなたも知っておいてね」
「ちょっ、おいおい・・・」
それから、大体のいきさつをアスマに話すと、彼は首に手をやりながら「ああ・・・そういうことか」と承諾してくれた。
「ところで、アスマさん。・・・私との約束、破ったそうですね」
「・・・すまない」
「謝罪するくらいなら、今後誰にも言わないと約束してください。次は本当に、実力行使しちゃいますからね。・・・今回は紅さんに負けちゃいましたけど」
「・・・お前、何かしたのか?」
「うん?・・・フフ、何もしてないわ」
こうして紅のおかげで、私はしばらくの間、木ノ葉の里に身をおくことができたのだった。