第38章 わたしは
小南は昨日会ったときもそんな素振りは見せていなかった。
私が気付けなかっただけなのか。
それとも、彼女自身がなんとも思っていないのか。
「・・・ナルトくん、頑張って。誰にも負けないくらい強くなって帰ってきてね」
「おう。オレってば火影になる男だからな、こんなところで死ぬわけにはいかねーんだ」
「うん、そうだね。大人になって、ナルトくんが火影になったらさ、私にも火影の椅子座らせてね?」
「ハハッ、いいってばよ!一番に座らせてやる!」
「ありがと!」
暗い空気を払拭するように、ナルトが、今度はいつもの笑顔を浮かべる。
それにつられるように私も笑うと、ナルトはやっと目線を上にあげた。
それからしばらく他愛もない話をしていると、急にナルトが私を見て言った。
「・・・お前さ、何かあった?」
「・・・えっ?」
「なんか、いつもと違う」
「大人っぽくなったとかそういう話?ありがとう、もっと言っていいよ」
「ちげーってば!オレ、真面目に聞いてんだよ!」
「そんなこと言われたって、ねえ。どこら辺がいつもと違う?」
「・・・全部」
「・・・」
「なんか全部が、微妙に違う」
それを言われた瞬間、なんとなくショックだった。
(何か変なことをしたかな)
違う部分に心当たりがなくて、スイレンを見ると、スイレンはナルトの言葉を肯定するように頷いていた。
「えっ、スイレンまで・・・私の何が変わったの?」
少しだけ変わった雰囲気。
どこか張り付けたような笑み。
それらをナルトは感じ取っていた。
ナルトが私に声を掛けたとき、私は無意識に一瞬だけ殺気を出してしまっていたらしい。
その一瞬だけでも、初めて向けられた殺気はとても冷たく、ゾッとするようなものだったとナルトは思った。
ここ最近、ずっと気を張りっぱなしだったからというのが理由だったとしても、それは明らかに私の変化だった。
けれども私は自分で変化に気がつくことはなく、その日アジトに帰ってスイレンに言われて初めて自覚するのだった。
「無理には聞かねーよ」
「フフ、優しいね。ナルトくんはさ、私のこと友達だって言ってくれるよね。でも私、ナルトくんに嘘ばっかついてるよ。それでも変わらずにそう言える?」
「じゃあさ、いつかお前の本当をオレに教えてくれよ。それで十分だろ」