第38章 わたしは
アジトに戻ると、小南がいた。
「ハル、おかえりなさい」
「ただいま、小南ちゃん。今日も来てくれたんだね」
「ええ」
小南は私が着ている暁の衣を見ると少し複雑そうな表情を浮かべたが、すぐに笑顔になり隣に座るよう促した。
「ケガはない?」
「うん、平気だよ」
「・・・何も、組織に入ることはなかったのに。あなたもいい思いはしないわ。事情があることはわかっているけど・・・」
小南と鬼鮫とペインは、私がサスケを殺すと脅されていることを知っている。
先日、初めて自分の口から、暁に入ることを三人に伝えたとき、小南は怒っていた。
「あなた・・・どういうつもりなの?ちゃんと説明しなさい。組織に入るということがどういうことか、わかって言っているの?」
「・・・小南さん、少し落ち着いてください」
「答えなさい」
今までに聞いたことのないほどの静かで冷たい声だった。
ガッと私の両肩を掴んだ小南が、怒っているのだと理解するのに時間は掛からなかった。
跡がつきそうなほど強い力に、少しだけ顔を歪め、何も言えないでいると横から静かな声が聞こえた。
「小南」
「っペイン・・・そうね、悪かったわ」
小南がパッと手を離し、気持ちを落ち着かせるように目を閉じる。
私は相変わらず口を開くことができなくて、下を向いていた。
「マダラから話は聞いていたけど・・・あなたも合意の上でのことなのかしら」
「・・・うん」
「どうして?前に入るつもりはないって言っていたじゃない」
「・・・」
「答えて」
小南以外の二人は何も言わなかったが、小南を止める様子もなかった。
私はゆっくりと口を開き、ほんの少しだけ震えた声を出した。
「約束なの・・・」
「え?」
「マダラとの約束なんです。私が組織に入れば、兄は殺さないって・・・ただの脅しかもしれないけど、私は何もできないから」
小南は何も言わなかったが、代わるようにそれまで黙っていた二人が口を開いた。
「なぜそれを今まで黙っていたんです?」
「言ったところで何か変わるわけでもないですから」
「・・・わかった。ハル、オレはリーダーとしてお前が組織に入ることを認める。お前の事情もわかった」
「ペイン!ダメよ、私は認められないわ」
「小南。ハルの気持ちも考えてやれ」