第38章 わたしは
「・・・任務はこれで終わりですよね。帰っていいですか」
「ああ。正直、もっと手こずるのかと思っていたんだが・・・意外だな。やはり兄の命がかかっているとなると働きも違ってくるものか」
サスケと再会した数日後。
私は正式に暁に入ることとなり、オビトからは賞金首狩りの任務を与えられていた。
暁の象徴であるあの衣を身に纏い、私は任務遂行に成功し、出先から帰ってきていた。
「・・・これ、お金です」
「ああ、そうだったな。その金はお前にやる。オレには必要ないからな」
「・・・そうですか」
その場から早く立ち去りたいという一心で、私はオビトとの会話を切り上げると、やっと帰路についた。
「ハア・・・」
『ハル、大丈夫・・・?』
「大丈夫。ありがとう、スイレン」
賞金首狩りというのはその名の通り、殺して死体換金所に持っていき、お金を受け取ることだ。
今回狩ったのは賞金が高く、腕の立つ忍だった。
「・・・早く帰ろう。帰って、お風呂入って寝よう」
『そうだね』
(こんなこと・・・みんなが知ったら、どう思うんだろ・・・)
今回の任務は単独だったが、鬼鮫や小南やペインは任務のことを知っているのだろうか。
もし知っているのなら、どう思われているのだろう。
知っていても知らなくても、私はどうにもできない。
(今オビトの命令に背けば、サスケ兄さんが殺されてしまうかもしれない。・・・ただの脅しかもしれないけど、オビトはそれだけの力がある)
何もできない自分を恥じながらも、私は、自分が段々逃げ道を失っていくのを感じていた。
オビトではなく、マダラによって。
あれ以来何もないけれど、目に見えない何かが私を囲っていくのがわかる。
それはアザという形となって、私の体に現れていた。
アザは着実に広がっていき、左腕の半分を侵食していた。
ネネからもらった“進行を遅らせる”薬もあまり意味がない。
(・・・呑まれるのは、時間の問題か)
『ハル、乗って』
「・・・うん。ありがとう」
(早く、何とかしないと・・・でも)
(・・・何とかできるのかな)