第37章 サスケとハル
「ハルさん、別にこの男と話さなくてもせっかくなんですから、お兄さんとお話しては?」
「は、はい・・・あの、鬼鮫さん、ありがとうございます。私のお願いをきいてくれて」
「大丈夫ですよ」
鬼鮫はいつもと変わらない様子で答えてくれた。
私はもう一度「ありがとうございます」とお礼を言ったあと、水月たちの方へ向き直った。
「初めまして・・・ハルといいます」
「キミ、サスケの妹なんでしょ?やっぱ似てるね!」
「・・・どうも」
やはりこの姿だと少し人見知りをしてしまう。
いかに自分が“クロ”という仮面を被っているかが実感できた。
すると、サスケがふと私に問い掛ける。
「ハル、“お願い”とはどういうことだ?」
「・・・あのね、サスケ兄さん。私が頼んだの。サスケ兄さんに会わせてくださいって、鬼鮫さんに」
「・・・お前が?」
「うん」
ソファに座っているサスケの隣に腰を下ろし、私は彼を見上げた。
「今はまだ言えないけど、私はサスケ兄さんに大きな嘘をついてるの。たぶん、いつかわかるよ」
「・・・嘘?」
「うん。“秘密”って言った方が聞こえはいいだろうけど、嘘には変わりないからね」
私が抱える大きな嘘。
私は後ろにいるソレをちらりと見た。
「サスケ兄さんにはちゃんと、妹として会っておきたかったの。ワガママに付き合ってくれてありがとう」
「・・・教えては、くれないのか」
「うん、ごめんね。でも、私の気持ちだけは本当だから。それは忘れないで」
サスケは昔のように拗ねたりはしなかった。
少し黙ったあと「わかった」と言い、私の頭を撫でた。
「・・・お前がそう言うなら、何も聞かない」
私は小さく笑い、「ありがとう」と言った。
すると、周囲が静かになっていることに気づく。
「あーあ、香燐さんマジで頑張らないとヤバくないですか?サスケ、めっちゃ優しいし」
「う、うるせえ!なんでウチに言うんだよ!」
「そういえば私、まだ挨拶してなかった!」
そう言うとクロが近づいてくる。
「私、クロっていいます。以後お見知りおきを・・・いやはや、お会いできて光栄です!」
「どうも・・・ハルです」
お互いに初対面のフリをし、クロと握手を交わす。
その時、グイと顔を近づけ、私はボソボソと話しかけた。