第37章 サスケとハル
「・・・お前が謝ることは何もない。謝らなければならないのはこのオレだ」
「・・・?」
「イタチ・・・兄さんを殺したのは、このオレだ。・・・お前から兄さんを奪ったのは、オレだ」
「違う」
ハルは間髪入れずにサスケの言葉を否定した。
「・・・サスケ兄さん。私ね、イタチ兄さんのことちゃんとわかってるから。サスケ兄さんだって、本当は違うってわかってるんでしょ」
「・・・」
「私は・・・ハルはね、大丈夫だから。サスケ兄さんが生きててくれるなら、私はそれで生きていける」
サスケはもう昔のきれいなままサスケではなかった。
復讐のために己の魂を売り、いくつもの罪を犯した。
だが、後悔はしていない。
これからも罪を重ねることになるだろう。
「・・・お前の命も、里より重かった」
あの男から教えられたイタチの真実。
あの男の言葉を借りるようだったが、サスケは妹のことを本気でそう思っていた。
イタチが守っていた妹を、兄として、今度はオレが。
そんな考えを知ってか知らずか、ハルは小さく笑ってサスケの手に自分の手を重ねた。
「・・・サスケ兄さん、覚えていてね。私もイタチ兄さんと同じ気持ちだってこと。私もイタチ兄さんも、サスケ兄さんのこと愛してるんだよ」
「・・・ああ」
それからしばらくの間、穏やかでゆっくりとした幸せな時間を過ごした。
こんなに満たされる時間は、いつぶりだろう。
(木ノ葉にいる頃、以来か・・・)
そうこうしていると、扉がノックされ、鬼鮫が顔を覗かせた。
「うまくいったようで何よりです、サスケ君。ハルさんも、いい目覚めだったでしょう?」
「鬼鮫さん、どうして起こしてくれなかったんですか!私、寝起きの顔を晒して・・・どうせなら、ちゃんとして会いたかったのに」
「良かったです、元気が出たみたいで」
「・・・え?」
「いえ、なんでも」
鬼鮫はそう言って、「ああ」とここに来た理由を話した。
「サスケ君、キミのお仲間が来ていますよ。水月がうるさくてかないません、早く黙らせてください」
サスケはそういえばと思い出し、立ち上がった。
ハルに「少し行ってくる」と言い残し、頭を撫でたあと部屋を出た。