第36章 兄が望んだもの
「じゃあ、小南ちゃんは私と話をするためだけにここに来たってこと?」
『・・・え?どうしたの?何か気になることでも?』
「忠告、か。小南ちゃん、何かあったのかな」
トビについての忠告は、きっと冗談なんかじゃない。
何かあったんだ。
でも、どうして私に?
(・・・もしかしたら、オビトは・・・)
「スイレン・・・よく、聞いてくれるかな。これから重要な話をするから」
不思議そうな表情をしているスイレンと部屋へ戻り、ガサゴソと引き出しを漁りだした。
『どうしたの?』
「あ、あった!」
『・・・?』
私の手にあったのは二枚の写真。
一枚は、昔、私の誕生日に家族で撮った写真と―――もう一枚は、ここに来てから少し経った頃の暁全メンバーと私が映っている写真だ。
それを丁寧に紙に包み、スイレンに渡した。
「・・・ほら、受け取って」
そう言うとスイレンは人型になり、おずおずとそれを受け取った。
スイレンがポケットにしまうところを見届けると、スイレンの目を見て言った。
「預かっていてほしいの」
『なんで?』
「もし私の身に何かあった時のため。私が返してって言う時まで、預かっていて」
『・・・ちょっと待って・・・それ、どういう・・・』
「ここまできたら察しなさいよ。何かよ、何か!私だってわからないけど・・・オビトは戦争のほかに、何か別のことを企んでると思う。小南ちゃんがわざわざ私に忠告しに来たのは、それがあるからかもしれない」
『・・・』
「私が“クロ”として木ノ葉に出入りしていることとか、もしかしたら既に気付いているかもしれない。イタチの妹である私を使って何かしようとする可能性だって―――・・・いや、これは考え過ぎか。とにかく、何かあったら木ノ葉に行きなさい。それが最善だと思う」
スイレンはポカンとした様子で私を見て、それから眉を下げた。
『キミ・・・どうするつもりなの?』
「まだ何も決めてないわ。でも、とりあえず写真は預けとく。なくさないでね、私の宝物だから」
『・・・』
スイレンは少し間をあけてから、頷いた。
「ありがとう」
そう言うと、スイレンは小さな声で『・・・うん』と言った。