第36章 兄が望んだもの
―――デイダラが、死んだ。
私が長門と直接話をした一週間後のことだ。
ついに暁は、ペイン・小南・イタチ・鬼鮫・トビの五名となり、アジトにはすっかり人の気配が少なくなった。
私は何も聞かないし、イタチも何も言わない。
そうして私は、今日もイタチの見送りをする。
「・・・イタチ兄さん、行ってらっしゃい。鬼鮫さんも、気を付けて行ってきてください」
「ああ。行ってくるよ」
「行ってきます」
二人に手をふって中へ戻ろうとすると、後ろから私を呼ぶ声がした。
「ハル」
「・・・小南ちゃん!どうしたの?今日は何しに?」
「ええ、ちょっと取りに来たものがあって。イタチは?」
「任務に出掛けたよ。今は私一人なの」
「そう・・・ならついでに、少し話相手になってくれるかしら」
「うん、いいよ」
そうして少しの間談笑していると、ふいに小南が小さくため息をついた。
「・・・どうしたの?」
「ねえ、ハル。この前は急にごめんなさいね、長門が」
「ああ・・・そのことなら、別に。でも結構緊張したよ」
「長門はああ見えて優しい人なの。誤解しないで」
「わかってるよ、小南ちゃん」
そう言うと小南は少しだけ笑い、「ありがとう」と言った。
そして少し黙ったあと、私の方へ顔を向けた。
「ハル・・・一つ、聞いてほしいことがあるの」
「ん?」
「聞いてほしいこと・・・というより、これは忠告ね。トビについてだけど、アレにはあまり近づかない方がいいわ。イタチから何か言われているかもしれないけど・・・アレと二人になってはダメ。危ないわ」
真面目な顔をして私を見る小南に頷いて見せると、彼女は眉を下げて言った。
「約束よ」
「うん」
そう言うと彼女の用は済んだのか、出て行ってしまった。
「何か物を取りに来たんじゃなかったっけ」と首をかしげていると、スイレンの少しむくれたような声が聞こえた。
『キミと話したかっただけなんじゃない?』
「え?」
『物を取りに来たなんて口実だよ。最近キミは僕に全然構ってくれないし・・・ねえ、聞いてるの?』