第35章 誘い
「お前がさっき言った言葉の真意を知りたい。無知なフリはしなくていい・・・お前は次々と死んでいく仲間を、どう思う?」
この問いよりも、なぜ長門が私をここへ連れてきたのかが知りたかった。
でも彼を前にして余計なことを考えるわけにもいかず、この際だから、と腹を括ることにした。
「・・・さっきも言った通り、辛いです。私だって何も失っていないわけではありません。でも、コレに慣れるのはいけないことですね」
「ならば、その痛みはどうする?お前は家族を失い、そしてまた仲間を失う・・・今、この世界が平和だと言えるか?」
「・・・言えませんね、たしかに。でも・・・この世界は守る価値があると思います」
「ほう・・・なぜだ?」
「私が幸せを感じられた時間があるからです。それに、まだ生きてほしい人がいます」
「イタチか?」
「いえ」
「・・・“うちはサスケ”か」
「はい。何より兄も、それを望んでいます」
おそらく、長門はイタチの事情を知っている。
だからこそ以前、サスケが里を抜けたことをイタチに教えていたのだと思う。
そして私があの場所へ住むことを許したのも、イタチに同情したからなのかもしれない。
「もう一人メンバーが死んだら、お前が暁に入れ。・・・暁がきれいな組織ではないことは知っているだろうが、平和のためだと考えろ。我ら暁は平和を実現するためにあるのだ」
小南が長門をチラリと見た。
私は少しの間目を伏せ、そして「・・・お断りします」と言った。
「それは兄が望むことではありません。それに、自分の力量もわきまえています。私では力不足でしょう」
「・・・では、イタチがお前ではなくサスケを選んだとしたら―――」
「長門さん」
「・・・なんだ」
「イタチ兄さんはサスケ兄さんを選びます。・・・そんなことはわかってるの」
最初からそんなことはわかっている。
寂しいといえばそうだけど、イタチは今まで私の傍にいてくれたのだから、文句は言えない。
私の表情にはうっすらと笑みが浮かんでいた。
「みんなの死は“有意義な死”だと、思いますか」
「・・・」
「人が死ぬ以上、無意味な死はどこにもないと私は思っています。生きる意味があればそれは“有意義”なものではないでしょうか。私にとって、兄たちが生きる意味だという風に」