第35章 誘い

「・・・そういえば長門さんは、どうして私なんかをここに連れてきたんですか？」

「それは・・・」

「小南」

「・・・何でもないわ。彼の気まぐれよ」


何か別の理由があるらしいが、どうやら教えてはくれないらしい。

そうですかとだけ答えると、彼が口角を上げて私を見ていた。


「・・・あの？」

「今までお前とイタチは似てないとばかり思っていたが・・・どうやら誤解だったようだ」

「あ・・・ありがとうございます。最高の、ほめ言葉です」

どうやら帰っていいようだったので私は頭を下げその場を去った。





ハルが去ったあと、小南は長門を気遣うように声を掛けた。


「大丈夫？」

「ああ。平気だ」


そう答えた長門の前に、ある人物が現れた。


「・・・お前が小南以外の人間をここへ連れてくるなんて珍しいこともあるものだな、長門。そんなにあの娘が気に入ったか？」

「・・・マダラか。何の用だ」

「フッ、随分とつれない様子だ・・・まあいい。今日ここへ来たのは少し話があったからだ」


そう言って彼は人柱力についてやその他の話をした。

そして一段落つくと、こう切り出した。


「ハルを暁にいれるつもりだったのか？」

「・・・」

「断られて残念だったな。しかしその理由がイタチだとは・・・よく兄のことを理解している。ククッ、あの娘もずいぶんと成長したようだ。意外にも、イタチよりも厄介だと捉えてもいいかもしれん。アイツも真実を知っている数少ない人物だ・・・」

「あなた、あの子に何をするつもり」

「さあな。だが・・・アイツをこちら側に引き込むのもいいかもしれない」

「・・・！」

「腐ってもうちはの血を継ぐ者だ・・・無下にはできないしな。あのイタチの妹だ、存分に役に立ってくれるだろう」

「・・・」

「きれいなものを汚すのに抵抗があるのか？・・・小南。何を今更迷うことがある？平和のためには犠牲は厭わないんじゃなかったのか」

「マダラ、用はもう済んだだろう」

「フッ・・・そうだな。あと一つ、お前たちに教えておいてやる」


マダラはその場を去る前に、二人に言い残した。


「・・・アイツはすでに少し汚れている。この呪われた世界に、汚染されたのだ」




『誘い』

“悪の灯（ともしび）”