第35章 誘い
「ねえ、大蛇丸様を倒したんだってね。綱手姫から聞いたよ」
「綱手?・・・ああ、火影か」
「よくそんなことできたね。この肩の呪印はどうするつもりなの?」
「術者を殺せばどうにかなるというものでもないらしいな。お前の手の呪印も、残ったままなのか?」
「うん。やっぱり大蛇丸様って面倒なことするよね」
すると、大きな声があたりに響いた。
「おいおいおい!!ウチらの前でいつまでくっついてるつもりだよ!!」
「香燐うるさいよ。見てわからないのかい?どう見てもカップルの感動の再会・・・ブッ」
「うるせえ!」
「いちいち殴らないでくれる?」
賑やかな声にサスケの首に回していた手を解くと、彼らに向き直った。
「お会いできて光栄です、皆さん。私、クロっていいます。この子はスイレン。どうぞよろしく!」
「よろしく。ボクは水月。このうるさいのが香燐で、デカいのが重吾。もしかしてキミがサスケが前に言ってた子かな?」
「ああ、その通りだ水月。・・・クロ、お前に提案がある」
水月はチラリとサスケを見て、そして私に視線を戻した。
サスケは私の方に向き直ると、いつもと変わらない調子で言い放った。
「オレについて来い」
「・・・目的は?」
「うちはイタチを殺す」
(やっぱりそうくるか。・・・にしても、妹の私が兄殺害に勧誘されるなんて・・・変な話ね)
けれども、返事に迷いはない。
「お断りだね。ごめんけど」
「どうしてもか」
「私には役目があるの。それは何よりも大切なものだから・・・いや、もちろんサスケは一番に大切だよ?でもその役目を放棄するわけにはいかない」
「そうか。仕方ないが・・・初めからお前が承諾するとは思っていなかった」
「えっ?あ、そう・・・でもサスケのことは心配だから、分身連れて行ってもいいかな。あなたを見届けたいの」
「・・・勝手にしろ」
「ありがとう。・・・ね、サスケ。がんばってね。絶対死なないでね。・・・妹さんの為にも、私の為にも」
サスケは答えなかったが、それで十分だ。
最後にサスケの手をにぎって、彼の目を見て笑いかけた。
(この言葉で・・・最後の覚悟、決めさせて)
「サスケ。ずっと、愛してるよ」
分身に目配せをし、その場を去った。