第34章 恩返し
アジトへ戻る前に、二つやらなければならないことがある。
『・・・おや、誰かと思ったぞ。ハル、今日は一人なのか』
「・・・はい。長さん、すみませんが少しお邪魔しますね」
『好きにするとよい。ここにいる誰もお主を追い出そうとはせんよ』
「・・・ありがとうございます」
ネネたちが住んでいる森へ足を踏み入れる。
長が私に気づき出迎えてくれたが、挨拶を手短に終わらせると奥の方へと足を進めた。
あの時作ったサソリの墓の横に膝をつくと、二つ、穴を掘り始めた。
(・・・泣かないって決めたのに、泣いちゃったな)
「馬鹿な私・・・」
額宛てを埋める、その上に大きな石を乗せると手を合わせて目を閉じる。
立ち上がり、三つの石を目に映すとその場を去った。
その後、アスマがいるあの家へ向かった。
ドアの前に立つと、スイレンの声が頭上から聞こえた。
『あれ?ハル、どう・・・した、の』
スイレンは私と目が合うと、少しだけ驚いたような表情をした。
「―――アスマさんの監視お疲れさま。二日後、アスマさんには木ノ葉へ帰ってもらうから、それまでお願いできるかな」
『・・・うん。なら僕も二日後にキミの元へ戻るよ』
「ん、ありがとう。・・・お願いね」
スイレンは何も聞かなかった。
ひどい顔をしていたに違いないのに、何かを察したのだろう。
(アジトへ戻ったら、誰かいるのかな。いない方がいいな。こんな顔、誰にも見せられない)
「・・・じゃあね、スイレン」
『うん。気を付けて』
スイレンに手をふり、私はアジトへ帰ることにした。
「・・・ただいま、帰りました」
一応、声を出してみる。
誰の反応もないことに安心した一方で、涙は出なかったけれども悲しくなった。
(こうやって、みんないなくなっていくんだ)
最後に残るのはこの私。
そうなるのはわかっている。
(・・・大丈夫、私はきっと、地獄行き・・・)
罰を受けないでいいはずがない。
呆然と立っていると、声が聞こえた。
「・・・ハル、そんなところに立ってどうしたの?」
「・・・小南、ちゃん」