第34章 恩返し
―――次の日。
私は一人で出かけていた。
黒いマントはすっぽりと私の身体を覆い、フードを深くかぶった。
おそらく外見からでは、私が誰かわからないだろう。
胸がいつもより早鐘を打つ。
(・・・原因はわかってる)
(あの二人が、もう帰ってこれないって、わかってるから)
たぶん、今日あたりだ。
シカマルたちと不死身コンビが再び戦うのは。
だからこうして―――その場に足を運んだ。
見届ける為。 それが私の役目。
(・・・あ)
私の目に映ったのは、カカシに心臓を突き抜かれている角都の姿だった。
しかし角都は無事で、シカマルたちと不死身コンビは一旦距離を取った後、黒い物体が不死身コンビの後ろに現れた。
(まだ生きてる・・・よかった)
「か・・・角都、さん。飛段さん・・・」
ボソリと思わずこぼれた呟きにハッと口元を押さえると、突然、角都が私の方を見た。
それにつられるように飛段もこちらを向く。
(この距離で聞こえるはずないのに・・・どうして・・・)
「んー・・・?おいおい、ありゃ・・・なんでアイツがいるんだ?」
「知らん。というかお前、あの姿でよくわかったな」
「角都だってわかったんだろーが。いや、アイツやばくねーか?イタチに怒られんのアイツもだけど、オレらもだぜ」
「オレを巻き込むな。どうせいつもの放浪癖だろう」
「だとしてもコイツらがハルに狙いをつけたらやべーだろ。説教どころじゃねーし・・・ちょっとオレ行ってくるわ」
「おい・・・!」
二人は少しの間話したかと思うと、飛段がこちらに向かって来た。
(!?)
大きな鎌を引きずりながら走ってくるのはとても怖い。
(向こうは私のことに気付いてないはずだから、もしかしたら私を殺しに・・・!? でもフードを取るわけにもいかないし・・・!)
アタフタしているのは頭の中だけで、実際には何も考えられずただ突っ立っているだけだった。
気が付けばいつの間にか飛段が目の前におり、顔を覗き込まれていた。
「おい、起きてんのか?・・・ハル」
「・・・え、あ、ああ・・・」
「なーんでお前ここにいるんだよ?いつもの放浪にしても、今回はちとヤベーところに来ちまったな。とりあえず、角都の流れ弾喰らわないうちに、お前は帰ってろ」