第34章 恩返し
―――翌日。
今日も隙を見て出掛けてきた。
イタチは昨日の分身と入れ替わったことには気づいていないようだった。
ホッとしつつも、罪悪感が少しあった。
そんなこんなで、今、昨日の場所へと足を運んでいた。
「こんにちは、ネネ。アスマさんの様子はどう?」
『ハル、主様、来てくれたんやね!この人、まだ起きてないんよ』
「そっか・・・まあ、じきに目が覚めると思うから、よろしく。分身の方は、この人が目が覚めたときに消えるけど、すぐに私が行くから」
『わかった。あ、そうだハル、長たちが久しぶりに会いたがってたよ。暇なら行ってあげて』
「長さんが?フフ、わかった、今度行ってみようかな」
アスマが目を覚まさないのが心配だが、今できることは何もない。
思わず小さなため息をつくと、ドアがノックされた。
「・・・!?」
(誰か、来た)
ここは人が来ないような場所だ。
それなのに、ノックされた。
思わず表情を固くしていると、スイレンが『僕が出るよ』と言って人型になってドアへ向かった。
開けるよ?と口パクで私に聞いてきたスイレンに頷いて答える。
『はーい、誰・・・―――えっ』
開けた途端、 ピシリと固まったスイレン。
見守っていた私とネネは首をかしげていたが、次の瞬間、その理由は明白となった。
スイレンが一歩下がり、苦笑いで私を見ていた。
「・・・どういうことか説明してもらおうか」
「―――う、あ、あの、」
「ハル。このオレに嘘までついて・・・オレを納得させるだけの理由があるのか、聞かせてもらうぞ」
そこにいたのは、イタチだった。
任務中なのか、後ろには鬼鮫の姿もあった。
(あ、アスマさん、隠さなきゃ・・・!)
「ね、ネネ、アスマさん隠して、早く!」
『わかった!』
小声でやり取りをし、ネネがアスマを寝かせている部屋の方へ行った。
「・・・イタチ、兄さん・・・鬼鮫さんまで、なんでここに・・・」
「ハル、兄を甘く見るなよ。それと、もう少しマシな嘘をつけ。“外の空気を吸ってくる”だなんて、バレバレだろ」
「う・・・ご、ごめんなさい。嘘ついたことは反省してます・・・」
いつの間にかイタチは私の前におり、縮こまる私の頭に手を置いた。
「・・・理由は?」
「・・・えっと、その・・・」