第34章 恩返し
「―――ガハッ・・・!」
「アスマ隊長!」
心臓を一突き。
その瞬間、アスマは口から血を吐き出した。
飛段が自らの体に向けた刃は、彼自身を傷つけたが、致命傷となったのはアスマの方だった。
するとその直後、増援が到着したらしく、角都と飛段は去って行った。
「アスマ先生!」
増援の中にいた、いのやチョウジが血だらけのアスマを見て声をあげる。
いのが医療忍術で治療を施そうとするも虚しく、すでに手の施しようがなかった。
彼らが唇をかんだとき、近くの茂みから一つの影が姿を現した。
ソレに気をとられた瞬間、シカマルの背後にもう一人が現れ、彼らが反応するよりも前に全員を攻撃し、気づいたときには全員がアスマから離されていた。
シカマルたちをアスマから離した背の高い方が、アスマの身体を抱き上げた瞬間、シカマルが気づく。
「まさかお前ら・・・!」
その言葉に、いつの間にかシカマルの背後にいた一人が彼の耳元に顔を寄せて言った。
「賞金首は、貰う」
シカマルが目を見開いた瞬間、それらは姿を消した。
「・・・ッ追うわよ!チョウジ!」
「うん!」
直後、それらの後を追ったものの、ついにシカマルたちが見つけることはできなかった。
その後、木ノ葉では、猿飛アスマは死亡と見なされ、アスマを連れ去った二人組は賞金首狙いの犯行だとほぼ決定付けられた。
アスマの遺体は木ノ葉に戻ることはなく、里には墓だけが建てられた。
―――謎の二人組がアスマを連れ去ったときまで時は遡る。
「アスマさん!アスマさん、聞こえますか?聞こえたら返事してください!」
スイレンがアスマを抱え、木ノ葉の忍たちから逃げるように移動している。
私はスイレンにおぶってもらい、すでに意識のない彼の心臓に手をあて、修復を図ると同時に必死に呼び掛ける。
『めっちゃ動きにくい!後ろから追ってきてるし、めんどくさいな!』
「頑張ってスイレン、あと少しよ!絶対に追っ手を撒いて。アスマさん、お願いだから目を覚まして・・・!」
この体勢では力を集中させるのは難しい。
「早く安定した所に・・・!」
数分後、やっと目的の場所につくと、彼を横たえ全力で彼の傷口を塞ぐことに集中した。