第34章 恩返し
正直、気が重い。
自分で決めたことであるが、今から私がしようとしていることは、実際、私にとってかなり危険だ。
(暁の二人にも、イタチにも、木ノ葉にも気づかれてはダメ。つまり、ミスは許されない、か)
誰かにバレたらその時点で、私にとってマズいことになる。
“ハル”にとっても、“クロ”にとっても。
「・・・ネネ、頼んだことちゃんとしてくれてるかな?」
『まあ大丈夫でしょ。そんなに難しいことじゃないし』
ネネには、あることを頼んだ。
簡単なことなので大丈夫だとは思うが、今になって不安になってきた。
「ま、いいや。・・・よし、頑張らなくちゃ」
気合いを入れ直し、彼らの方へ意識を集中させた。
暁二人と木ノ葉が対峙したのは昼過ぎだった。
少し離れた木の影から様子を見ることにした私たちは、顔を見られないようにマントのフードを深く被っていた。
「・・・いい?スイレン。私の合図があるまで待機よ。ほら、フード被って!」
『見えにくいなあ・・・』
「作戦はさっき言った通りだから。お願いね」
『うん・・・ってキミ、緊張してる?』
「・・・うん、まあね」
緊張していないほうがおかしい。
失敗してしまえば、どう転んでも凶となる。
すると、ふいにスイレンが私の頭に手を乗せた。
「・・・?」
『キミがいつもしてくれるでしょ?僕、キミに撫でてもらうと落ち着くんだ。だから、さ』
「あ、ありがとう・・・」
『大丈夫!僕がいるんだもん』
(・・・スイレンに心配される日がくるとは・・・)
でも、おかげで少し落ち着いた。
こうしている間にも、目の前では激闘が繰り広げられている。
「・・・心配かけてごめん、スイレン。さ、おしゃべりはここらで終いよ」
(うまくいきますように)
ため息を一つ吐き出すと、事を静かに見守ることにした。