第34章 恩返し
「ん?・・・ハルさん、誰と話してるんですかぁ?」
「・・・こ、この子と・・・」
そう言ってスイレンを指さすと、トビは首をかしげた。
(難しい・・・)
彼に慣れないというより、どう接したらいいかがわからないといったほうが表現として適切かもしれない。
今は味方だと思うか、それとも、今から敵だと思うか。
(どの考え方が正解なんだろう・・・)
まだ模索中ではあるが、とりあえず今は人見知りだという設定にしておこう。
未だ何かを言い合っているデイダラとトビをおいて、私はこっそり部屋へ戻ったのだった。
―――夜。
「おかえりなさい。イタチ兄さん、鬼鮫さん」
「ああ。ただいま、ハル」
「ただいま帰りました、ハルさん」
帰ってきたイタチたちをいつものように迎えると、イタチはポンポンと頭を撫でてくれた。
(明日は何がなんでも出掛けなきゃ。角都さんたち、ついに木ノ葉と戦うかも・・・)
今日も角都と飛段は帰ってきてない。
明日には対峙することになるかもしれない。
(―――となると、ついにアスマが・・・死ぬ、か)
ここで私のなかに一つの考えが浮かぶ。
(猿飛アスマは、私の恩人である三代目の息子・・・アスマの死を防げば、三代目の恩に報いることができる、か、も・・・)
「・・・さて、どうするかなあ・・・」
『どうかした?』
「うん、あのねスイレン、明日イタチ兄さんにバレないように出かけるから。分身を残して行くから、お留守番よろしくね」
『ええ?キミ一人じゃ危ないよ!僕も行く!』
「そんなこと言ったって、バレたらヤバいんだって」
『危ないの!だから僕も行くからね!』
「・・・わかったよ」
そう言っていると後ろから声が聞こえた。
「何が“わかった”んだ?」
「・・・あ、イタチ兄さん。いたんだ・・・」
「お前、この前のオレとの約束を、まさか忘れたわけじゃないだろうな」
「いや、でも、もう十分外出は控えた・・・」
「なんだ?」
「・・・」
誤魔化すようにヘラリと笑うと、鬼鮫の笑い声が聞こえた。
「あなたも懲りませんねえ」
「・・・はい」
バレないように、と言ったばかりなのに、すでにヤバい気がする。
(いざとなったら強行突破するか)