第34章 恩返し
翌日、飛段と角都は昼過ぎになると出掛けて行った。
二人を外まで見送ったあと、小さくなる二人の姿をしばらく見つめていた。
すると、横にいたスイレンがふいに後ろを向いた。
つられて私も振り向くと、イタチがいた。
「・・・ハル、気になるか?」
「イタチ兄さん・・・ううん、ただ心配なだけ、二人が帰って来てくれるかなって」
「そうか」
サソリがあけた穴は、トビという男が埋めた。
初めてまともに顔を会わせたとき、ついに来たか、とギュッと胸が締め付けられるような、不安を覚えた。
いきなり顔を近づけられ、「よろしくお願いします!」と言われたときは驚いたが、イタチがさりげなく壁になってくれて、「コイツは人見知りなんだ」と言った。
たぶんイタチは、私にトビとあまり関わってほしくないのだろう。
(私も、あまり関わると“クロ”のこと勘づかれそうで嫌だな。・・・もう気づかれてるかもしれないけど・・・)
「とりあえず中に入らないか?そうだ、あとでオレが写輪眼の使い方を教えてやろう。コントロールが難しいから、慣れておいたほうがいい。今後役に立つかもしれないからな」
「! ・・・うん!」
イタチの思い付きの提案は、私を十分に喜ばせた。
おかげでその日はご機嫌で、不死身コンビが帰ってきた時には、笑顔で迎えることができた。
その翌日。
不死身コンビは帰って来ず、イタチと鬼鮫も任務のため、出掛けて行った。
私は分身を木ノ葉に送り出し、イタチとの約束通りアジトにいた。
「おいハル、お前一人か?」
「あ、うん。デイダラ、今日は任務休み?」
「おう」
「・・・トビさんは?」
「どっか行きやがった・・・うん」
その言葉にホッとしたと同時に、デイダラの後ろからニョキっと彼が現れた。
「デイダラ先輩、何して・・・お、噂のハルさんじゃないスかぁ!」
「ああ!?つーかテメェ、あんまコイツに近づくな・・・うん!変なのが移るだろ!」
「ひど!ボクだってお話したいですよ!」
「コイツは人見知りなんだ・・・うん。そうイタチにも言われただろ」
そのやり取りを見ていると、スイレンがふいに私を呼んだ。
『ハル、大丈夫?キミがこんなに喋らないなんて珍しいね』
「緊張してるのよ」