第34章 恩返し
(すごい会話だな)
こんなことを食事中に言えるのはある意味すごい。
すると、イタチが咳払いをしその会話はそこで終了となったが、鬼鮫は「そう怒らんでください」となぜか楽しそうに笑っていた。
「ハル、食べ終わったなら部屋に戻ろう」
「うん。スイレン、行こうか」
『はーい』
そばにいたスイレンに声をかけ、「ごちそうさまでした」と言うと、イタチに続いて部屋に戻った。
イタチはベッドに腰かけると、いきなり言った。
「今回はどこに行ってたんだ?」
「・・・えーっと・・・そこら辺・・・」
(お説教が軽いものだったから、てっきりもう聞かれないものだと思ってたのに・・・!)
「変なところに行ってないだろうな?」
「い、行ってないよ!」
(油断した・・・そのせいで言い訳なんて考えてないし・・・!)
頭をフル回転させたものの、いい言い訳が思いつかず冷や汗が出そうになっていると、焦っている私とは対照的にイタチは軽く笑った。
「そんなに構えなくてもいい。別に無理に聞こうとしているわけじゃないし、お前が言いたくないのならそれでいいんだ」
「・・・!」
「ただ・・・オレと一つだけ、約束してほしい」
イタチは微笑んだまま、私の目を見て言った。
「絶対に危険な真似はするな」
「・・・うん、わかってるよ」
「・・・お前のことだから、そんなことはしないだろうが、一応な。たまにボロボロになって帰ってくるし、心配なんだ」
「あはは・・・うん、大丈夫!スイレンもいるし」
イタチは「そうか」と言ってスイレンを見た。
(でも、ごめんね)
危険な真似をしない―――なんて、約束はできない。
これから先、たくさんのことを経験していって、危険な場面もあるかもしれない。
「イタチ兄さんは心配性だね」
「そんなことはないと思うぞ」
「大丈夫。ハルはイタチ兄さんとずっといっしょだから」
この心臓の鼓動が止まるときまで。
(イタチ兄さんがしようとしていることを止めるつもりはない)
「ハル。これから先、いろいろあるだろうが・・・何があっても、オレを信じてくれ」
頷くと、イタチは辛そうに笑った。
(さすが兄妹。考えることは同じ・・・か)
あなたには生きていてほしいのに。