第3章 里と犠牲と守るもの。
「何、してるの?」
わざとヘラ、と笑ってみせる。
「ハル、向こうへ行ってなさい。あなたはここにいちゃダメよ」
「どうして?」
母は私に強く言い聞かせる。
「っそれ、は・・・」
「ハルもここにいなきゃいけないんでしょ?」
「何を言って――――」
スタスタと、父と母が座っている方に行く。
「ハル!!」
「――ねえ、イタチ兄さん」
母が悲痛に叫ぶ。
こんな状況のせいか、イタチは目を見開いたまま固まっている。
「朝、言ったこと・・・覚えてる?」
「・・・ああ」
「なら、問題はないじゃん。あれが、ハルの・・・本心だよ。しょうがないじゃん、サスケ兄さんの為だもの」
「っ・・・」
「ね?」
「―――――いや、ハルには何もしない」
イタチは、確かにこう言った。
今度驚くのは私の方だ。
「――――は?」
そう発したのは私で、父と母は明らかにホッとした様子だった。
「・・・何、言ってるの?そ、それじゃあサスケ兄さんはどうなるの!?イタチ兄さん!!自分の言ってること分かってる!?」
「ああ」
「それならっ・・・!」
「――ハル」
「―――っ!?」
私を見たイタチの目は、赤かった。
(万華鏡車輪眼)
それを分かったときにはもう既に遅かった。
「っ・・・・うっ・・・」
身体に力が入らなくて、崩れ落ちる私の身体をイタチがタイミングを見計らったように受け止める。
イタチの服からは、鉄の臭いがした。
訳もわからず、涙が勝手に出てくる。
「っ・・・兄さ・・・んなっ・・・こと、して・・・」
「大丈夫だ。サスケは助かる」
「っ・・・母さ・・・父さん・・・」
「ハル、愛しているわ。イタチ、あなたのことも愛してる。私たちの子供だもの」
「ああ」
「だからね、ハル。もうお休みなさい?また、きっと、会えるわ」
「・・・・・・・」
最後に、ハルの涙が頬を伝い、床に染みを作った。