第3章 里と犠牲と守るもの。
「イタチっ・・・」
崩れ落ち、涙を流して意識をなくした妹を抱き止め、母に向けて大丈夫だという意味も込めて、頷く。
「そう・・・良かった」
ホッとした様子の母に対して、厳しい顔の父。
「・・・イタチ。ハルに何か言ったのか?」
「いや、何も言ってない」
「・・・そうか。いや、何だか知ったような口振りだったからな」
「・・・・・イタチ。ハルとサスケのこと、頼んだわよ」
「・・・・・・ああ」
そう言うと、父と母は目を閉じた。
「――兄さ・・・どうして・・・?」
「俺が全部やった」
「そんなっ・・・父さん、母さん・・・!っハルは・・・!?」
「ああ、これのことか」
目の前の光景が信じれないという風に震える声で尋ねるサスケ。
イタチは足元に倒れているソレを掴んだ。
「っ!?」
「無力だな。コイツも、お前も」
手足にはまるで力が入ってなく、ダランと垂れ下がっている。
朝見たはずの、白いワンピースは赤に染まっている。
「ハルッ!!」
思わず、サスケは手を伸ばす。
が、イタチはそれと同時にソレを離した。
ドダ、と下に落ちる音がした。
「・・・いつか、俺を殺しに来い。俺と、同じこの眼を持って・・・!」
「―――ああああああああ!!」
「俺を憎め」
「っ兄さん・・・いや、イタチ・・・!!お前を殺す!!絶対にな!!・・・ハルの分まで!!」
月が綺麗な夜。
少年は復讐を誓い、その幼き瞳に復讐の炎を宿した。
(殺してやる・・・!)
青年は、懺悔の言葉を誰にも聞かれないように口にする。
(ごめんな、こんな兄貴で)
少女は物心ついてから、初めて人の前で涙をこぼした。
(イタチ兄さんっ・・・)
彼らの両親は、とても優しい大人で、彼らの幸せを一番近くで祈っていた。
(私たちはあなたたちを愛してる)
それぞれの想いを胸に抱いて。
『里と犠牲と守るもの』
“嘘で塗り固めた真実”