第33章 笑顔
もはやサスケに迷いはなく、全身から千鳥を出し、すでにナルトとサイを圧倒していた。
私は何をするわけでもなく彼らを見ていると、ヤマトの声が聞こえた。
「クロ、君も援護しろ!・・・これは命令だ!」
「! ・・・了解です」
“大丈夫です、命令には従います”
私が以前、ヤマトと話しているときに言った言葉だ。
覚えていたのか、と驚くと同時に、少し嬉しくなった。
『ハル、行くの?』
「うん。だって、初めてもらった隊長の命令だもんね」
ヤマトがサスケに圧されている。
優位に立っているサスケの背に向かって、クナイを投げたが、刀で防がれた。
「・・・クロ。どういうつもりだ?」
「上司の命令には従わなきゃね。ね、サスケ。久しぶりにちょっと遊ぼうよ。大丈夫、手加減してあげるからさ」
「フン・・・お前が命令とやらに従うのはいいが、余裕でいられるのも今のうちだ」
「それは楽しみだね」
サスケの草薙の剣は、ガード不可らしい。
ならば、攻撃は限られてくる。
何度か攻撃を繰り出したあと、サスケの刀を左の手のひらで受けとめ、右手でクナイをサスケの首筋に当てていた。
「直接受けたか・・・さすがだな、お前は。昔と変わらない」
「うーん・・・痺れるね。左手に穴が開いちゃう」
クスクスと笑って見せるが、実のところヤバい。
早く抜いてくれないかな、と思っていると、サスケがナルトの方へ視線を向けた。
その瞬間に私は、刺さっている刀を抜いた。
ダランと垂れ下がった左手の傷が塞がっていくのを感じ、ホッと息をついた。
「サスケ・・・何でわかんねーんだ!もうじきお前の体は大蛇丸にとられちまうんだぞ!」
「オレにとって復讐が全てだ。復讐さえ叶えばオレがどうなろうがこの世がどうなろうが、知ったこっちゃない。力が手に入るなら・・・こんな命、いくらでもくれてやる」
サスケの目は本気だった。
私は何も言えなくて、ただサスケを見守ることしかできないんだろうな、とこの先を察した。
「お前たちはもういい。終わりだ」
サスケが何かの術を発動しようとした瞬間、サスケの手を誰かが掴んだ。
「その術はやめておきなさい、サスケ君」
「大蛇丸・・・」
その隣にはカブトもいた。
彼らは一言二言話したあと、どこかへ消えてしまった。