第33章 笑顔

彼らが去ってしまって、呆然と立ちすくむ私たちはしばらく経って、肩の力を抜いた。


「ハア・・・疲れた・・・」


一人ため息をつく私をよそに、サクラとナルトの嗚咽が聞こえてきた。

一瞬驚いたが、彼らの心情を察することは容易かった。

けれども何と声を掛けて良いかわからず、その姿を見ていると、ふいにナルトが私の方を向いた。


「クロ」

「なに？」

「勘違いすんなってばよ。別に、お前を責めるとか、そんな風に思ってるわけじゃねーんだ」

「そうなの？・・・気を使ってもらわなくても構わないよ。私はキミたちが必死に探しているのを知っていて、言わなかったんだよ。もっと罵倒されるのかと思ったんだけど」

「・・・そうだな。本当はお前を殴り飛ばしたいところだけど・・・そんなことしたらサクラちゃんに殺されるってばよ」

「なんですって？」

「何でもないってばよ！・・・とにかく！オレもサクラちゃんも一応、お前のことは仲間だと思ってんだ。お前ってば昔から何考えてんのかわかんねーけど、いい奴だってことはわかってっから」

「・・・」


―――仲間。

この状況でそんなことを言えるナルトを、すごいと思った。

ましてや私を？

何を考えてるのかわからないのは、ナルトの方だ。


「・・・ありがとう、ナルトくん。でももし私がキミたちを裏切って、敵になったらどうするの？」

「お前はそんなことしねーよ」

「どうして？」

「お前がそんな奴じゃねーってこと、わかってるから」

「そうよ。クロはそんなことしないわ。私たち、あなたのこと信じてるもの」


そう言った彼らのどこまでも真っ直ぐで純粋な目に、一点の曇りもなかった。


「・・・そっか。私、そんな風に思われてるんだ」


私にはその目を見ることはできなくて、掠れた声で「ありがとう」と言って笑った。

横にいたヤマトや、サイの探るような視線が、少しだけ苦痛に感じた。






『笑顔』


“いつか本当の意味で笑いあえる日が来るまで”