第33章 笑顔
戦いは凄まじかった。
あの中に入れば、まず間違いなく死ぬだろう。
それがわかっているから、誰も戦いに参加しようとはしなかった。
ナルトだって自我を失っている。
人柱力は桁外れに強い。
実際に尾獣の力を使ったところを見るのは初めてだけど、ここまでとは思っていなかった。
(すごい・・・だけど、体の損傷が激しすぎる。消耗戦にしても、一回でこれじゃあ寿命が縮んでしまう)
ふいに、彼らがこっちに近づいて来ているのに気が付いた。
このままでは、私たちが今いる場所に――――。
「っ!」
ゴッ!と岩が砕ける音がして、砂煙が上がる。
「クロ、無事か?」
「はい、なんとか」
私たちがさっきまでいた場所は、粉々になっていた。
私たちは別の場所へ移動し、安全を確保していた。
「ヤバいな・・・」
ナルトの暴走は止まらない。
まるで別人の彼に視線が釘付けになっている中で、カブトが口を開いた。
「見なよ、アレを。あんな姿になってまでサスケ君を助けたかったのかね。今じゃ自分の意識すら飛んでしまっている・・・」
「悲しい子だ・・・」
サクラはその言葉を聞くと、ギリ、と歯を食いしばったあと、涙を流した。
そして、駆け出した。
ナルトに向かって。
「サクラちゃん!」
「待てサクラ!今のナルトに近づくんじゃない!」
サクラはそんな私たちの声も無視して、ナルトに近づく。
「ナルト!もういいから!サスケ君は私が助け出して見せる!だから、だからナルトはもう・・・!」
今のナルトに、どんな言葉をかけても届かない。
サクラもそんなことは分かっているだろうけど、それでも、言わずにはいられなかったのだろうか。
「っ!」
ナルトは容赦なくサクラを傷つける。
普段の彼なら、こんなことは絶対にしないだろう。
「・・・あーあ。サクラちゃん、私、ちゃんと止めたよね?」
「っクロ・・・だ、だってナルトが」
「“だって”じゃないよ。危険だってことくらい、わかるよね」
ヤマトが木遁でナルトを押さえ込んでいる。
ナルトはヤマトに任せることにして、サクラの腕の傷の上に手を乗せた。
傷が塞がっていくのを確認すると、カブトがこちらを見ていることに気がついた。