第32章 二年
その日の夜。
ハルが部屋で寝ているのを確認すると、イタチは居間に戻った。
そこには、メンバーの姿があった。
「・・・なあ、旦那が死んだけどよォ、その穴はどーやって埋めんだ?・・・うん」
「そのことについてはまだ詳しくは話せないわ。けれど、デイダラは少しの間、待機状態になると思う」
「・・・了解」
小南の言葉に不満そうなデイダラだったが、文句を言っても何かなるわけではないので、渋々頷いた。
そんなデイダラに話しかけたのは、飛段だった。
「んで?デイダラちゃんよ、サソリを殺ったのは誰なんだ?」
「・・・たしか、小娘と年寄りだった気がするぜ・・・うん」
「それほどの相手だったんだろう。年齢や性別は関係ない」
「イタチはいっつも冷静だよな・・・うん」
片方の手で頬杖をつくデイダラ。
イタチはその腕を見ていた。
(ハルはデイダラの腕を元通りにした・・・あれは医療忍術なのか?見たことがない・・・そもそも、ハルはどこで・・・)
「イタチさん」
「・・・なんだ」
「ハルさんにはサソリのこと、何と伝えたんですか?」
「・・・むしろオレが聞きたいくらいだ」
「は?」
「おい、この中で、ハルにサソリのことを言ったやつはいるか?」
イタチは全員の顔を見渡した。
だが、彼らは「言っていない」と言った。
「・・・そうか」
「・・・これ以上何もないなら、オレは部屋に戻らせてもらう」
「あ、じゃあオレも」
「そうね。遅くまで悪かったわ」
角都が席を立ったことで、自然とお開きになった。
立ち上がっていた小南を、イタチが引き止めていた。
「ちょっといいか、小南」
「何?」
「・・・昨日、ハルがどこに行っていたか知らないか?」
「知らないわ」
「出掛ける前には何も言わなかったのか?」
「・・・急に飛び出して行ったのよ。慌てて外へ出たけど、靴が落ちていただけで、もう姿がなかったわ」
小南は「おやすみなさい」と言うと部屋に戻っていった。
少しの間、何やら考え込んでいたイタチも、ため息をつくと電気を消して、部屋に戻った。