第32章 二年
あの場所から去ったあと、私はネネたちがいる森へ向かった。
出迎えるなり何かを察したネネは『どうしたん?』と静かに私に尋ねた。
勘のいい子で、「墓を作りたい」と言えば、二つ返事で了承してくれた。
それからというもの、森の奥の奥へ進み、人間が誰も足を踏み入れたことのないようなところまで来てから、足を止めた。
ここなら荒らされる心配もない。
膝をつくと、素手で土を掘った。
爪の間に土が入っても、石で指先を傷つけても、無我夢中で掘った。
あっという間にできた穴は、額当てともらってきた一部を入れるのには十分な大きさだった。
ちょうどいい大きさの石をたてる。
こんなのでもないよりはいいかと思った。
手を合わせ、黙祷を捧げる。
ポツリポツリと雨が降り始めた。
「・・・帰ろう、スイレン」
『・・・いいの?』
「・・・うん」
次第に勢いを増し、雨は激しく地面を打ち付けていた。
アジトに帰ると、中には全員がいた。
「・・・あ、おかえりなさい、ハルさん・・・ハルさん?」
私に声をかけたのは鬼鮫だった。
ずぶ濡れの私を見て、すぐにタオルを持ってきてくれた。
「ありがとう」と掠れた声で言えば、心配そうな顔でイタチがそれを受け取り、私に被せる。
イタチが私の顔を覗きこむ前に、タオルをスイレンに渡し、奥に座っているデイダラのもとへ向かった。
彼は角都に、切断された腕を縫合してもらっていた。
「・・・デイダラ、腕、かして」
「は?・・・何言ってんだ、うん」
「いいから」
やや強引にデイダラの腕をつかみ、ちぎれた腕と、デイダラの腕を近づけ、その上に手を重ねた。
すると、みるみる彼の腕が繋がっていく。
「おいおい・・・お前、何したんだ、うん」
「デイダラには、元気でいてほしいから」
「いや、おい・・・」
「土がついちゃった。ごめん」
デイダラは驚いたように自分の腕を見つめる。
そんな彼を見たあと、「お風呂借りるね」と言い、脱衣所へと向かう。
だが、その途中、手を握られた。
「イタチ兄さん・・・?」
「ハル・・・どうしたんだ?」
「ううん、何でもない」
みんなは泣いていない。
悲しくないというわけではないと思う。
この場の空気が重々しいのが証拠だ。