第32章 二年
『キミ、どこに向かうつもりなの?』
「サソリの匂いを追って、あとできればその周りにいる人の匂いもわかれば一番いい」
『無茶言うよ・・・僕の鼻がどれだけ高性能だと思ってるの。まあ、頑張ってみるよ』
森を抜けて、目の前見たことのない景色が広がる。
『ん・・・とりあえずサソリの匂いを追ってる。周りに人がいるのかどうかは不明・・・ごめんね、僕の鼻はそこまで広範囲にわたるものじゃないみたい』
「いいの、ありがとう。そのままお願い」
『オッケー』
大して動いてもいないのに心臓がドクドクと音をたてている。
おまけに、胸がキリキリと締め付けられているようで苦しい。
(何も考えずに出て来たけど、小南ちゃんを困らせてしまったな。あと靴を投げたこと、イタチ兄さんに怒られるかも・・・)
一応、クロの姿に変化した。
どこかもわからない森をしばらく走っていると、スイレンが何かに気が付いたように上を向いた。
と、次の瞬間、頭上に大きな影ができる。
思わず見上げれば、空には彼がいた。
「あっ・・・デイダラ・・・」
彼は私に気が付いていないようで、後ろをチラチラ見ている。
私にとっては前方。その方向から来る二つの姿が確認できた。
「スイレン、止まるな」
『了解』
彼らとすれ違う瞬間、二人は私を驚いた表情で見ていたが私はそれをすべて無視した。
(ナルトとカカシ・・・か。デイダラが捕まえている我愛羅を追っているのね)
『あともう少しでつくよ』
スイレンが足を止めたのは、それから十分後のことだった。
洞窟のような場所に、周りに散らばっている数々の岩屑。
スイレンから降り、急いで中に入る。
入口に私が立つことで、中の光が遮られた。
『待ってハル、まだ―――!』
「待ってられないわ、こんなの・・・!」
私の目に映ったのは―――
「・・・!」
二つの傀儡が持っている刀で、突きぬかれている彼の姿だった。
両のはだしが、石を踏んで痛みを感じる。
「・・・ッあ・・・」
それよりも、胸が痛かった。