第31章 残念ながら
「―――ただいま帰りました」
帰るとイタチたちはまだ戻っていないようで、いたのは鬼鮫だけだった。
「あれ・・・鬼鮫さんだけですか?」
「おかえりなさい。デイダラもいますよ。飛段と角都は出掛けていますが・・・どうしたんですか、こんなにボロボロになって」
「え?えーっと・・・」
ボロボロと言われても仕方がないかもしれない。
服はあまり汚れてはいないし傷もないけど、土や砂が肌についていたのでそう見えたらしい。
「いやでも、ケガはしていないので・・・」
「そうですか?あ、お風呂に入ってくるのはどうでしょう。二日も出歩いていたのですから疲れているのでは?」
「あ、はい」
たしかに疲れた。
いろいろなことがありすぎて、ある意味自分の運の悪さを思い知った二日だった。
頷いて脱衣所へ向かおうとすると、ギュルルル・・・という間抜けな音がした。
「・・・何か用意しときますね」
「す、すみません・・・」
恥ずかしさでその場を急いで立ち去る。
そう言えば、昨日のおにぎり以来、ちゃんとしたものを食べていなかった気がする。
(こんな歳になってまでお腹の音がなるとか・・・)
背伸びをして見た鏡に映る自分は、疲れと羞恥心がごちゃまぜになっていて、なんだか不安定な顔になっていた。
「・・・はーあ。ねえスイレン、わざわざ人型にならなくてもよくない?ていうか入ってくるの?」
『もちろん入るよ。人型になったのは、僕がキミの髪を洗うためだよ』
「疲れてるくせに何言ってんの。自分でできるよ」
『ううん。平気だし、僕がそうしたいんだけど』
「・・・じゃあお願いしようかな」
今回の任務は精神面が鍛えられた気がする。
(カカシは綱手にどう報告するつもりなんだろう・・・イタチとサソリのこと、なんて言うつもりなんだろう・・・)
「ハア・・・私の精神が削られていく気がするわ・・・」
『なんか今日ため息多くない?』
「当たり前じゃない。死にそうになるし、問い詰められるし・・・いつかボロが出そうで怖いな。どちらにせよ、全部時間の問題よね・・・」
『流すよ』とスイレンの声が聞こえ、目をつむる。
その他何やらを済ませたあと、ようやく湯船につかるところまでくると、温かいお湯がじんわりと体にしみた。