第31章 残念ながら
お風呂から出て居間へ戻ると、サソリとイタチの姿があった。
「あ、ハル。ただいま」
「お、おかえり・・・遅かったね」
「ちょっといろいろあってな。髪、まだ濡れているじゃないか・・・ほら、貸せ。拭いてやる」
オオカミ姿のスイレンが『ホント、別人だよねえ』とイタチのことをさしているのか、感心したように言う。
「ありがと、イタチ兄さん。私も今帰ったんだよ」
「へえ、そうか。ケガはないか?」
「うん、大丈夫。あ、イタチ兄さんもお風呂入って来たら?さっぱりするよ」
私の提案に、イタチは「そうだな」と言って私の頭を撫でてから浴室へ向かったようだった。
その後ろ姿を見送ったあと、用意してあったおにぎりを頬張る。
(おにぎりブームなのか?てか相変わらず塩だな・・・まあおいしいけど)
モグモグと食べていた私のところに、サソリが来た。
「あ、おかえり」
「ああ。お前さ・・・ソレつけられたとき、誰かいっしょにいたのか?」
「・・・え?い、いや・・・スイレンといっしょにいたけど・・・」
「そうか。じゃあ茶髪のガキ知らねえか?」
「ちゃ、茶髪?う、うーん・・・わかんない、かも・・・」
(これ絶対“クロ”のこと聞いてるよね?ていうか、まさか目つけられた・・・?)
「・・・そうか。別にそれならいい」
そう言ってサソリは自室に戻って行ったようで、奥へ消えてしまった。
食べかけのおにぎりを平らげ、鬼鮫にお礼を言うと、ソファに座る。
本当はもう眠たいけど、食べたあとすぐに寝るのは太るって聞いたことがある。
―――そんな私だったが、結局五分も経たずに眠気に負けてしまったのだった。
『ハルー?寝たの?もう・・・風邪ひくよー』
「まったく・・・ハル、こんなところで寝ていたら風邪ひくぞ」
『同じこと言ってるし』
「?」
結局最後は、イタチがハルを連れて自室へ戻り、ハルもイタチも泥のように眠りについたのだった。
『残念ながら』
“あなたの特別”