第31章 残念ながら
『ハル、上!』
「えっ?」
足元に影ができた。
スイレンの声に見上げると、大きな岩が落ちてきていた。
間一髪で避ける。
「あぶな!もしかして、カブトが言ってた“時間”って・・・」
『たぶん、ここが崩れる時間だと思う。早くここを出なきゃ』
そこでなぜか左手がしびれていることに気付く。
(・・・まさか)
カブトが言っていた毒のことだろうか。
かすめただけだからそこまで重症ではないと思うけど、今のこの状況では面倒なことには違いなかった。
「めんどくさ!!もー・・・!」
そうしている間にも、岩はいくつも落ちてくる。
小さいものから、大きいものまで。
カカシたちの姿を探すと、彼らはすでに大蛇丸らが向かった通路にいた。
「クロ!早く来い、崩れるぞ!」
カカシの焦ったような声が聞こえる。
(待っててくれるんだ)
なんて、呑気なことを頭の片隅で思った。
頭上からは容赦なく岩が降ってくる。
それを避けつつ出口へ向かうのは、正直キツイ。
「ピンチかも・・・!」
『いざとなったら僕が頑張るけど・・・?』
「マジでヤバくなったら頼むけど!!―――カカシさん!先行って!」
大声を出しているつもりだけど、カカシにはその声が聞こえていないようだった。
この状況を打破するには、やはりスイレンの力を借りるのが手っ取り早いかもしれない。
でも、イタチに変に勘ぐられるのは避けたい。
(・・・まさに八方ふさがり)
少しずつ近づいていくものの、カカシたちがいるところへはまだ遠い。
すると―――ふいに、目の前に影ができた。
「・・・へっ?い、イタチさ」
グイと腕を掴まれ、そのまま肩に担がれる。
「黙っていろ、小娘」
「へっ・・・ハイ」
あっという間に到着する。
ポイ、と乱暴に投げられ尻餅をつくが、すぐさまお礼を言う。
「あ、ありがとうございます、助けてくれて」
「聞きたいことができたからな。死なれては困る」
「聞きたい、こと・・・?」
イタチはもう何も言わなかった。
見渡すと、ご丁寧にサソリとカカシが待っていたことがわかった。
「すみません、足を引っ張ってしまって」
「・・・いや。動けるか?」
「はい」
そう言うと、カカシを先頭に先へ進んでいった。