第31章 残念ながら
ズキズキと呪印が痛む。
「・・・使い終わったくせに、随分と痛むのね」
「それなりのリスクがあるからね。君はその先に興味は?」
「ない。しつこい男はモテないよ、カブトさん!」
チラリと大蛇丸の方を見れば、彼は暁の二人とカカシを相手に戦っていた。
「よそ見かい?」
「いや別に」
カブトの手にはクナイが。
接近した際に、左手をかすめ、包帯が解ける。
(やべっ!)
「・・・今度は外さないよ。これは毒がついていてね。体内に入ると、身体がしびれて数時間には動けなくなる」
「ああ、そう・・・どうしよう」
「君の治癒力はかなり高いみたいだけど、でも体内に入ればどうだろう?さすがに血液循環までコントロールできるってわけじゃないだろ」
(替えの包帯を今日に限って切らしてたはず・・・!どうしよう、このままじゃ呪印が見えてしまう)
悩みはそれだけではなかった。
大蛇丸が操っているであろう、あの人間たち。
もはや生きているのか死んでいるのかもわからないが、彼らが私たちの周りに徐々に近づいてきていた。
『ハル!どうするの?』
肩に乗っていたスイレンが私に問いかける。
「・・・ねえ、あの人たちって、生きてるの?」
『生きていることは生きているんだと思う。でも、僕の考えるところではね、あの“封”ってのは、自我を封印しているんだと思うよ。だから・・・ほぼ死んでいるといってもいいのかもしれない』
「そう・・・わかった」
自我を封印する。
そうなれば、ほぼ死んだに等しい。
操られるくらいなら、死んだ方がマシかもしれない。
私を見ているカブトの目の前で、印を結ぶ。
(ごめんなさい)
「―――“火遁・豪火球の術”!」
彼らの体が燃え上がる。
もはや反射的な叫び声しか出ておらず、肉の燃えるようなにおいがした。
彼らが倒れていくなかで、カブトには表情の変化は見られなかった。
「・・・そろそろ、かな」
「?」
「大蛇丸さま!そろそろお時間です!」
カブトは大蛇丸の方を振り返り、そう言った。
大蛇丸は「わかった」と言うと、最後にニヤリと笑ったあと、奥の細い道へ走って行く。
カブトもそれに続く。
『ハル、危ないから早く逃げて!』
「え?」
聞き返した瞬間、ドゴォオン!という音がした。