第31章 残念ながら

「ああ・・・もう、面倒な・・・」


スイレンがどうにかしてくれようとアタフタしている。


『ハル！ど、どうしよう・・・噛もうか！？そうしたら少しは―――』

「ありがとう、ス・・・ポチ。ちょっと突っ込んでみるわ」

『え・・・！？』


ここで痛がっていても時間の無駄というなら、このまま突っ込むという手もあるんじゃないのか。

呪印に、少し頼ってみることにする。


「よい、しょッ・・・！」


呪印を開放する。

私の左半身を呪印が覆っていく。

底知れない力が湧いてくるのを感じながら、地を蹴った。


（“状態２”になったらこれ以上か・・・すごいな）


言葉通り、二人がいるところに突っ込む。

ドガン！と岩が崩れる音がして、砂煙があがる。


「避けた、かあ。でも、これだけの威力・・・なるほど」

「・・・見たところ、呪印を使い慣れてなさそうね」

「体に負担が掛かるし、好んで使うものじゃないでしょ」

「・・・アナタはサスケくんとは違うタイプなのね」


「サスケ」という言葉にイタチが反応する。

今行動を起こしているのは私だけで、他のみんなは成り行きを見ているようだった。


（別に大蛇丸と戦う理由はないけど・・・）


「たしかに、この呪印はすごいものだと思う。何もしていないのにチャクラが湧き上がってくるようで・・・―――力加減を誤って、誰かを殺してしまうかもね」


もう一度、大蛇丸の方に向かって地を蹴る。

あと少し―――そんなところで目の前に、カブトが現れた。


「君は、本当に突っ込んでくるのが好きだね―――！」

「別に好きじゃない」


間に会話を挟みながら、体術の攻防戦となる。

途中、カブトがクナイを投げ、私の頬をかすめる。

思わず顔をしかめるが、すぐに治るので問題ない。

カブトが驚いたような顔をした、その瞬間。

わずかな隙ができて、蹴りが鳩尾に入る。


（傷が治ったことにびっくりしたのか？）


いつの間にか、包帯が巻かれた人間たちは動き出していた。


「いってて・・・やってくれるね、君」

「よそ見するから悪いんですよ。あんまり気ィ抜くと、殺しちゃうかも」

「言うね。でも・・・」


カブトが一気に距離を詰めてくる。

繰り出されたパンチは辛うじて躱した。


（・・・呪印が、切れたか）