第31章 残念ながら
カカシとサソリの姿が見えたのは、少し行ったところだった。
スイレンはあいかわらず呑気な様子で、抱いて走っている間にも、何かを楽しんでいるように見えた。
大きな広間で、彼らがいたのは下の方だった。
傍にあった階段を駆け下りようとすると、イタチに手首を掴まれる。
「?」
「後ろを見ろ。オレたちはコイツらを片付けてから行った方がいいだろう」
「えー・・・でも、カカシさんたちも同じようなものですよ?」
彼らも先ほどの私たち同様、札を張られた人間に囲まれていた。
「・・・わかりました」
「何をする気だ?」
「ここの入口を塞ぎます。そしたら、もう来れないでしょ」
入口の前に立ち、印を結ぶ。
「土遁・土流壁(どとん・どりゅうへき)」
口から土を吐き出し、壁を作る。
正直、土遁を使ったことはあまりなかったので成功するか不安だったが、うまくいってよかった。
チラリとイタチを見るが、すでにこっちを見ておらず、カカシたちがいる方を見下していた。
「どうします?私たちも加勢した方がいいんじゃ・・・」
「そうしたいならすればいい」
突如、パチンと指を鳴らしたような音が聞こえた。
「!」
それと同時に札を張られた人たちの動きが停止する。
音がした方向を見ると、そこにはあの男がいた。
「カブト、と―――」
そこで目を見張る。
私たちが探していた男の姿もあった。
「大蛇丸・・・」
多少容姿が変わっていたものの、それが大蛇丸だということはわかった。
「久しぶりの顔がたくさんね。と言っても、全員私を殺しに来たのかしら―――・・・あら、クロちゃん。やっと私のところへ来る気になったのかしら」
「・・・」
「あなたは手に入れがいがありそうね。そういうの、きらいじゃないわ」
「私は、誰かのものになるつもりはない」
大蛇丸は私を見て口角を上げると、何やら印を結んだ。
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
「!?」
左手が痛い。熱い。
大蛇丸が呪印に何かしたんだと察するのに時間は掛からなかった。
「―――うっ・・・!?いっ・・・ふざけ、」
「ソレは私がつけたもの。あなたの体の所有権は私が握っているのよ」
「・・・この体は、私の・・・もの、よ」
そうは言ったものの、痛いものは痛い。