第31章 残念ながら
心の中でため息をつくと同時に、カブトが「まあいいさ」と言った。
「いずれ君も、力がほしくなるさ」
「・・・今のところ、自分で手に入れる予定なので」
「そうかい?ハハッ、大蛇丸さまが君を気に入った理由が少しだけわかった気がするよ」
(「気に入った」?大蛇丸、私のこと気に入ってんの・・・?)
頭の片隅で考えていたが、次のカブトの声で我に返った。
「―――ああ、そうだ。ここは大蛇丸さまがよく使う実験場所なんだけど、実験体が逃げ出すこともあってね」
パチンとカブトが指をならす。
すると、私たちが通ってきた通路から何かの音が聞こえた気がした。
『ハル、後ろから何か来るよ』
「何?」
『なんか、よくわかんないけど・・・』
気配は一つではなかった。
バッとカブトを見ると、奥の細い通路に向かって走り出していた。
「カカシさん!」
「チッ・・・」
カカシは「わかってる」と言い、サソリは舌打ちをし、カブトのあとを追った。
残されたのは、私とイタチ。
冷や汗が背中をつたったのがわかった。
気まずさに無言のままお互いのことをガン見していたが、すぐに後ろから迫ってくる“何か”に集中し始めた。
『あと二十メートル・・・十メートル・・・五メートル・・・』
そこで、“何か”の姿が見えた。
「うわ・・・」
見えたのは、人間―――。
よく見れば、目に包帯が巻かれ、お札のようなものが張ってある。
それが数えきれないほどいた。
「“封”・・・?」
「お前、どれくらい戦える?」
「・・・へっ?」
「どれくらい戦えると聞いている」
イタチが私に質問している。
それだけでも焦るのに、“ハル”からかけ離れた話し方をしなければならないということに、また焦った。
「・・・まあまあ、ですかね」
「オレの足を引っ張ってくれるなよ」
私に投げかける声はやはり冷たい。
どれだけ“ハル”に優しくしてくれているかが、今の立場になるとわかる。
(でも、私のこと殺さないのかな)
そう思っていると、イタチはクナイを取りだし、お札目がけて投げた。
命中したが、数が多すぎて埒があかない。
「イタチさん!私たちも向こう行きましょう!」
イタチはクナイを投げるのをやめると、先ほどカブトが走って行った方へ向かった。