第31章 残念ながら
後ろのカカシから声が掛かった。
「・・・お前、知り合いなの?」
「以前、一度だけお会いしたことが」
「・・・お前を殺し損ねたときだがな」
「物騒なこと言わないでくださいよ」
カカシが立ち上がったところで、私はクナイをしまう。
もう敵意はないことを示すように。
カカシの「は?」という目線と、彼らの私の様子を窺っているような目線を感じながら、ヘラリと笑って見せた。
「カカシさん、大丈夫ですって。ね、イタチさんも落ち着いてくださいよ」
「・・・お前、何考えてるの?」
「まあまあ。ほら、そこの赤髪のお兄さん、いいですねえ。なんていうか、そのダルそうな感じ?」
サソリは無反応だった。
気を付けないと、いつものサソリに対する話し方と同じになってしまう。
(怒らせたら面倒だからな・・・ちゃんとしよう)
「ひょっとして、大蛇丸さまを探しているんですか?」
「・・・」
「もし良ければ、一旦戦うのはやめて、ここはお互いに協力しません?」
「断る」
「えー、イタチさん早いなあ。そっちのお兄さんはどうです?」
「知らねー」
私の申し出に、彼らからはいい返事はもらえず、さらにはカカシからも睨まれた。
それに気づいていないフリをして、思い出したようにスイレンを呼ぶ。
「スイ―――」と言いかけて、やめた。
スイレンの名前は彼らの前で言わない方がいいと思ったからだ。
「・・・えー、あー・・・ぽ、ポチ!」
『・・・ポチ?』
「そう、アンタのこと!ごめん、ちょっといろいろあって」
私の声に、スイレンは自分のことだと判断したのか、姿を現した。
「ポチ」と呼ばれたことにやや不服そうな様子を見せていたが、状況を察してくれたのか文句は言わなかった。
「あ、それでどうです?やっぱりダメですか?」
「・・・当たり前だ」
「でも、お互い悪くない話だと思いますよ。あ、実は私たちも大蛇丸さまのこと、探してるんです」
私が大蛇丸を“さま”付けで呼んでいるのは、これでも彼のことを尊敬しているからだ。
三忍の名を持つ忍。
一人の忍としてはとても憧れを抱くが、だが性格は好きには慣れない。
憧れるのは、あくまで彼の実力。
ネネたちのこともあるし、やはり好きになれないと思う。