第31章 残念ながら
―――翌朝、何やら声がして目が覚めた。
「・・・おはよ」
『あ、おはよ。よく眠れた?』
「うん・・・」
スイレンは人型の姿のままだった。
ずっと傍にいてくれたのだろうか。
寝ぼけた頭で悟り、スイレンの頭を撫でる。
「ありがと・・・迷惑かけたね」
『ううん、全然!むしろ役得だった』
「・・・あ、そう」
「クロ、おはよう。向こうに川があるから、ちょっと顔洗って来たらいいよ」
カカシに小さく会釈をし、指さされた方向へと足を進めていく。
川にたどり着くと、そのまましゃがみこみ顔を洗う。
川の水はひんやりと冷たくて、一気に目が覚めた。
「あー・・・スイレン」
『ん?』
「今日、大蛇丸と会うかもね。それでもし・・・鉢合わせすることになったら、隠れて」
『・・・わかったよ』
「万が一だけどね。あー・・・私、大蛇丸は苦手だなあ。呪印もあの人が手綱を握ってるんだよねえ・・・」
なかなかテンションが上がらず、ボソリと呟く。
すると、後ろから誰かが近づいて来たのがわかった。
「ん・・・?カカシさん、かあ」
「オレで悪かったね。にしても、お前、朝弱すぎでしょ」
「言ったでしょ」
「低血圧なわけ?」
「・・・ん、どうだったっけな」
身支度を済ませると、出発する。
しばらく無口・無表情だったが、時間が経つにつれて通常状態へ戻っていく。
「カカシさーん、今日大蛇丸さまに会います?」
「んー、どうだろうね。オレたちの任務はあくまで居場所の特定だから。もう想定範囲内に入っているから、あんまり気を緩めないようにね」
「はいー。だってスイレン。そろそろ変身しよっか」
“変身”。
我ながら乏しいネーミングセンスだと思う。
これはスイレンが、いつものオオカミの姿ではなく、別の何かの姿に変わるということだ。
そしてスイレンが変わったのは、黒猫だった。
「おー」
『おそろい!これで僕も黒いね!』
「あは、そうだね。その姿もかわいいじゃん」
『ありがと』