第31章 残念ながら
スイレンにあげたおにぎりは鬼鮫が作ったものだ。
そして私が食べているのは、イタチが作ったもの。
きれいな三角形だ。
それを食べたあと、寝ることになった。
「見張りは交代ね。先に体を休めといて。時間がきたらオレが起こすから」
「はい。・・・あ、でも私、結構寝起き悪いんですけど」
「ちゃんと起きてよね」
その会話を最後に、私は寝る支度をし始めた。
木に背を預けているが、正直めっちゃ固い。
これで寝れるのかと心配になったが、とりあえず目を閉じると、そのまま意識は遠ざかっていった。
「―――・・・、ロ、クロ」
「・・・?」
ユサユサと体を揺らされ、意識が浮上していく。
だが目を開けるのが億劫で、目を閉じたまま「はい」と返事をする。
実際、カカシには「・・・い」としか聞こえていなかったが。
「クロ、交代。お前の番だから」
私の番か・・・と目をうっすらと開くと同時に、身体が持ち上げられた気がした。
「・・・ぁ?」
『いいよ、まだ寝てて。僕が代わりにするから』
「す・・・?」
『うん、僕だよ。おやすみ』
「んー・・・」
まどろみの中、スイレンの声と人間の体の柔らかい感触が私の体を包んでいた。
スイレンが人型になって、私の見張り番の代わりをしてくれるらしい。
寝始めていた時の背中の固い感触は消えており、さっきよりもずいぶんと眠気を誘った。
カカシの声も耳には入っていたが、返事をするよりも前に、また眠りに落ちていった。
「―――えー・・・嘘でしょ」
『何がだよ。ていうか、寝たら?ハ・・・じゃなくて、クロの寝顔は見せてあげないけど』
「いや別にいいけどさ。いつも君が、クロの代わりにやってあげてんの?」
『好きでやってることだから。クロは一回寝ると、起きるまでが大変なんだよ。ま、かわいいもんだけどね』
「あ、そう。じゃあオレは休ませてもらうよ」
変なところで子どもっぽいんだな、とは口に出しては言わず、カカシは体を休めることにした。