第31章 残念ながら
カカシは最初こそ歩いていたものの、「走るよ」と言うと、走り出した。
急だったもので置いて行かれそうになったが、スイレンがきちんと反応してくれたおかげで置いてけぼりを食らわずに済んだ。
そして、走り続けること、夜。
森の中へ足を踏み入れていた私たちは、大きな木の下に腰かけていた。
「今日はここまでね。明日、また朝から行くからちゃんと体休めといて」
「あとどれくらいですか?」
「半分ないくらいかな。でも居場所の特定はできていないみたいだから、あんまりその情報を当てにするのはよくないかもな」
今日はここまでのようで、明日はもっとハードになりそうだ。
アジトのみんなには「今日は帰らないかも」と言っておいたので、言っておいて正解だと思った。
イタチは不安そうな顔をしていたが、「ネネたちのところに行く」と言えば「そうか」と言ってくれた。
嘘をついたことへの後ろめたさはあったものの、本当のことを言うわけにもいかず、結局そのままで通した。
「ふーん・・・あ、夕飯何食べます?私、おにぎり持ってますよ。作ってもらったんです」
「作ってもらったって・・・お前、お母さんでもいるの?」
「いや私、人の子ですけど。作ってくれたのは母じゃないですけど、母のおにぎりは大好きでしたね」
(過去形、だけど)
おにぎりは、イタチが作ってくれた。
他にも、イタチのその様子を見ておもしろがった飛段や、親切心で作ってくれた鬼鮫の合計三個を包んで持ってきた。
飛段が他のメンバーも誘っていたが、デイダラは手のひらに口があるし、サソリは「傀儡に付くだろうが」と断り、角都は始めから「めんどくさい」という理由で断っていた。
「んー・・・はい、コレあげます」
「ありがと。って・・・コレ言っちゃ悪いけど形悪いね」
「あ、それはたぶん・・・ハハ、ま、気にしないでください。毒は入ってないですよ」
カカシにあげたおにぎりは飛段が作ったものだ。
飛段はふざけていて、途中、一度自分で作っていたおにぎりを落としていて鬼鮫に怒られていた。
そんな光景を思い出していると、自分でも口角が上がっているのがわかった。
「何笑ってんの?」
「あは・・・いや、気にしないでください。あ、スイレンにもあげる」
『わー、ありがと。これがキミの手作りならなあ』