第30章 あなたがいない場所
アジトに戻ると、イタチと鬼鮫以外のメンバーが揃っていた。
二人は任務のようで、まだ戻って来ていないらしい。
少し残念な気持ちになったが、スイレンに薬をもらわなければならないし、ある意味ラッキーだったのかもしれない。
夕食もお風呂も済ませたところで、それぞれのくつろぎのタイムが始まった。
「・・・最近、小南ちゃんとペインさん来ないなあ」
「あー、小南姐さんなァ・・・いろいろあるんじゃねーの?それよりハル、ジャシン様の話を聞かせてやろう!」
「え?あー、いや・・・遠慮しときます」
「はあ!?聞けよー、んでお前も信仰しろ!」
「私、無宗教なんで。あ、飛段さん、サソリが聞きたそうですよ」
「おいテメェ」
ソファの隣に座っているサソリに丸投げする。
「ふざけんな!」と言うと、サソリは嫌そうな表情をしていた。
「大体、お前の言ってること全然わかんねーんだよ!ただの殺戮宗教だろうが」
「あッ、ジャシン様バカにすんじゃねえ!オレはな、ジャシン様に命捧げてんだ!」
「つか、死ぬときってどんな感じなんだろーな」
「あ?そりゃー・・・」
サソリはめんどくさくなったのか、あからさまに話題を変えた。
しかし飛段は変えられたことに気付かないのか、そのままサソリのペースに乗っていた。
「なァ、角都はどう思う?」
「・・・知らん。オレは死んだことがないからな」
「ま、そうだよな。あ、ハル、お前はどう思う?」
「え・・・」
「バッカ、お前、コイツはまだガキだろうが」
飛段は私にも話をふってきたが、サソリが「お前バカか」という目で飛段を見ている。
スイレンは興味がなさそうに、ソファ一個をまるまる占領してくつろいでいた。
「・・・死ぬときはね、気が付いたらって感じだよ」
そう言葉にすると、まさか私が答えるとは思っていなかったのか、全員の視線がこちらへ向いた。
「飛段さん、寝たことありますよね?」
「うん」
「寝るときって、自分がいつ寝たかわかりますか?」
「んー・・・いや、わかんねーな」
「そんな感じです。気が付いたら死んでたって感じですよ。死ぬことの擬似体験がしたいなら、寝たらいいんです」
「へえ」
「ま、死んでしまえば、もう目を覚ますことはないだろうから、死んだことにも気づかないんでしょうけど」